2005 Fiscal Year Annual Research Report
内耳カリウムイオンリサイクルに対する骨髄間葉系幹細胞移植の役割
Project/Area Number |
17791201
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
弓削 勇 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70306786)
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Keywords | 再生医学 / 細胞、組織 / 内耳 / イオンリサイクル / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
動物難聴モデルに対する骨髄幹(KUSA-A1細胞)の内耳蝸牛へ直接投与を行い、内耳線維芽細胞への生着を観察する事を試みた。その結果、骨髄幹細胞は内耳や中耳にわたって細胞が生着したが、多くの細胞は骨に置換されていた。生体内で線維芽細胞へ分化していたかどうかは今後の検討課題としたい。 今後実験動物において間葉系幹細胞から分化させた内耳幹細胞を投与し、細胞の着床を含めたnetworkの形成と内耳の機能再生について検討する事も視野に入れたい。 まとめとして、我々は有毛細胞の存在する内リンパ腔に骨髄幹細胞を投与したが、現時点では内耳線維芽細胞の完全なる分化や再生には至っていない。しかしながら、これらを基盤に本研究を推進することにより(1)有毛細胞が消失した部位に移植された幹細胞が着床することによる、聴力低下のある患者に対する自家ないし同種他家細胞を用いた内耳再生法の確立 (2)ヒト骨髄間葉系細胞の寿命延長、増殖法の研究から得られる結果に基づくバイオインフォマティクスからの情報の蓄積、それらの方法の安全性、科学性、倫理性の確立を今後の課題としたい。投与した細胞が分化あるいは再生しやすい環境についても検討を加えていく必要があるだろう。いままで内耳再生の視点で骨髄幹細胞の投与について論じたが、視点を変えてみると、中・内耳は骨で囲まれた組織であり、骨髄幹細胞が骨細胞に分化し、骨組織に変化することは内耳再生とは別に、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの中耳疾患に対するアプローチには有用であるかもしれず、この知見は中耳の再生医療として新たなる選択肢になりうるかもしれない。
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