2006 Fiscal Year Annual Research Report
液性因子により未分化培養網膜上皮細胞に誘導される遺伝子発現の特性
Project/Area Number |
17791265
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石橋 一樹 神戸大学, 大学院医学系研究科, 助手 (20324923)
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Keywords | 増殖硝子体網膜症 / 網膜色素上皮細胞 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
増殖硝子体網膜症発症のリスクファクターである網膜冷凍凝固術による網膜色素上皮細胞への早期の影響を調べるためにマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。人培養網膜色素上皮細胞であるARPE-19細胞をディッシュ上に培養し、培地を除去した後にマイナス80度のフリーザーに20秒間置いて約マイナス20度まで冷却することによって冷凍傷害を加えた。冷凍傷害をおこなった後、速やかに培地を加え、その後2時間培養をおこなった。冷凍傷害群、冷凍障害を加えないコントロール群それぞれ3サンプルの実験を行い、各サンプルから回収したRNAよりcRMAを作製してAffymetrix社のマイクロアレイを用いて発現遺伝子を検出した。遺伝子発現のデータを平均化した後に群間比較をおこなった結果、冷凍傷害をうけたARPE-19ではさまざまな遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。それらの中でも注目すべき遺伝子を選択してリアルタイムPCRを行った。炎症に関連するサイトカインIL-6、ケモカイン、増殖に関与するPDGF-A、PDGF-B、VEGF等の増殖因子、細胞外器質であるフィブロネクチンなどの上昇はリアルタイムPCRでも発現上昇が確認された。これらの遺伝子は増殖硝子体網膜症発症のプロセスである炎症、細胞増殖、増殖膜形成のそれぞれのメカニズムに関与していることが報告されている。今回報告した解析により冷凍凝固術は物理的に網膜色素上皮の散布を助長させるだけでは無く、傷害を加えた網膜色素上皮細胞自体の遺伝子発現を早期より変化させることによっても増殖硝子体網膜症の発症に関与することが示唆された。これらの研究結果は英文学術雑誌へ投稿した。
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