Research Abstract |
目的:加齢により骨代謝に異常を来し,変形性顎関節症や骨粗鬆症を発症する老化促進マウス(SAM)を用い,間葉系幹細胞を含む骨髄が採取部位によって骨形成能や骨代謝にどのような相違をもつのか,また遺伝子,タンパク発現にどのように反映されるかを検証すること.さらに下顎骨と四肢骨を比較しその特異的な機序を十分に考察し,骨造成およびインプラントの向上のための新しい生物学的な診断・治療法を模索することとを目的とした. 方法:SAMP8およびSAMP6,また同系統のコントロールマウスSAMR1を用い,個々のマウス,30日,60日,90日,120日,150日齢の下顎骨,上顎骨,大腿骨,腓骨より骨髄間葉系細胞を採取する.採取した細胞をウシ胎児血清で継体培養し,分光度を測定する.さらに骨芽細胞分化能をALP活性により,破骨細胞分化能をTRAP染色により解析する.評価は培養後3,7,10,14,21日目に行い,マウス種別間の疾患の基となる骨代謝を検討する.また組織学的観察を行うため,培養後4,6週に各試料の脱灰標本を作製し,各マウス種別間での組織像により骨表現型の相違を評価し,骨質による差を検討する. 結果:マウス下顎骨,大腿骨,腓骨から採取した骨髄は特に問題なく培養することが可能であったが,上顎骨から採取した骨髄は培養することが出来なかった.また下顎骨骨髄と四肢骨である大腿骨,腓骨骨髄とでは培養した細胞性状が異なっている様子が観察された. 考察:上顎骨から採取した骨髄を培養することが困難であったのは量的に非常に微量であること,採取時に骨髄以外の軟組織等が混入していたことが考えられる.また下顎骨と四肢骨で培養細胞の様子が異なることから,各々の骨代謝能や骨性状が異なっていると考えられる.今後更に骨形態学的,組織学的,分子生物学的に検討を加えていく予定である.
|