2006 Fiscal Year Annual Research Report
歯の形態形成におけるステロイド受容体の役割-ステロイド療法の歯への作用機序解明-
Project/Area Number |
17791518
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
河野 承子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (10397127)
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Keywords | 歯学 / 細胞・組織 / ステロイド受容体 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
糸球体腎炎や腎臓移植等によりステロイド療法を受けた患者に、歯髄腔の狭小、象牙前質の拡大、歯の発生段階では萌出速度の異常がみられることが知られている。また、歯の窩洞に副腎皮質ホルモンを直接投与した実験では象牙前質の縮小、象牙芽細胞層の不規則化といったさまざまな歯の異常が報告されている。我々は、ステロイドホルモン受容体であるエストロゲンレセプターが歯性細胞、特にエナメル芽細胞に特有のパターンを持って発現していることを報告し、また、ステロイドホルモンの標的タンパクである、amiloride-感受性Naイオンチャンネル膜貫通型タンパク複合体(ENaC)の歯性上皮系細胞における発現局在を明らかにした。さらに、他の研究グループより培養細胞でのENaCの発現の制御に、エストロゲンレセプターが関与していることが報告され、歯牙組織、特に歯性上皮性細胞でのエストロゲンレセプターとENaCの発現パターンの類似性に関して、また、歯性上皮でのステロイドホルモンの重要性が明らかになりつつある。これら一連の研究により、主にカルシウムの動態に主眼がおかれていた歯の硬組織における物質輸送は、エナメル器乳頭層細胞がENaCを特異的に発現したことから、ナトリウムイオンの動態、その輸送タンパクの局在に移す必要性が出てきた。さらに,最近の我々の研究により明らかになりつつある乳頭層細胞の形態的変動、毛細血管との局所解剖学的相関関係から、これまで、付加的な細胞、accessory cellとしてしかみなされなかった歯胚乳頭層細胞がエナメル質の成熟過程に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、歯性上皮細胞、および、間葉系細胞に広範にステロイド受容体(グルココルチコイド受容体、ミネラルコルチコイド受容体)免疫陽性反応が観察されたことにより、歯牙形成過程での、ステロイドホルモンの重要性が示唆された。
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