Research Abstract |
【目的】歯周病・骨粗鬆症の病態は,共に骨吸収の亢進に起因する.そして,骨吸収を担う唯一の細胞が破骨細胞である.破骨細胞の起源は,生体内に広く分布する単球・マクロファージ系細胞である.しかしながら,破骨細胞は骨組織にのみ出現する.なぜ破骨細胞の出現は,骨組織に限局されているのだろうか?破骨細胞の出現・形成は,どのような因子に制御されているのだろうか?そこで,骨誘導因子(BMP)の移植による異所性骨形成の検討を通じ,破骨細胞出現のメカニズムを詳細に解析した. 【方法】BMP-2を含むコラーゲンペレットを正常,OPG欠損,RANKL欠損マウスの筋膜下に移植した.そして,移植片に出現する破骨細胞と骨芽細胞を観察した.破骨細胞はTRAP染色,骨芽細胞はALP染色により同定した.さらに免疫組織学的にRANKLの局在を観察した.また,筋芽細胞をBMP処理により骨芽細胞へと分化誘導させた場合のRANKL mRNA発現を検討した. 【結果】1.BMPペレットにおけるTRAP陽性細胞の出現は,石灰化に先立つものであった.TRAP陽性細胞は,ALP陽性細胞に近接した部位にのみ認められた.2.BMPペレット周囲の細胞にRANKLタンパクの発現が認められた.3.BMPのみでは,骨芽細胞の分化マーカーであるI型コラーゲンmRNA発現を誘導する事ができたが,RANKL mRNA発現は誘導できなかった.4.OPG-FcのBMPペレットへの添加は,破骨細胞前駆細胞の出現には影響しなかったが,破骨細胞の分化を強く阻害した.5.RANKL欠損マウスへの移植では,RANKLの腹腔内投与により,骨組織にのみTRAP陽性細胞が出現した.6.血中RANKL値が高値を示すOPG欠損マウスにおいて,BMPを含まないペレットでは,破骨細胞前駆細胞が存在するにも関わらず,破骨細胞を誘導できなかった. 【考察】破骨細胞形成には,石灰化硬組織が必要ではなく,骨芽細胞が破骨細胞形成を支持する.また,全身性の血中可溶性RANKLよりも,局所におけるRANKLが重要である.そして骨芽細胞は,全身性RANKLを局所で作用させるなど,破骨細胞形成に必須な微細環境を提供する事が示された.また今回の研究を通じ,破骨細胞形成に関与する未知の因子の存在も示唆された.さらなる破骨細胞出現メカニズムの解明は,歯周病・骨粗鬆症の治療方法の発展に,寄与できるものと思われる.
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