2005 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制薬サイクロスポリンAが有する歯槽骨吸収作用の病態解明に関する研究
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17791557
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
堀部 ますみ 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (50346615)
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Keywords | 胎児性アルコール症候群 / 概日リズム / 同調 / セロトニン |
Research Abstract |
【緒言】免疫抑制剤サイクロスポリンA(CsA)の副作用として歯肉増殖症が知られているが、CsAによって骨粗鬆症が誘発されることが臨床的にも実験的にも報告されている。一方、骨粗鬆症患者ではアタッチメントロスが大きく、歯周病のリスクファクターになり得る可能性が指摘されている。今回、CsA誘発性歯肉増殖症ラットモデルにおいて歯槽骨の変化について形態学的に検索を行った。 【材料と方法】 15日齢雄性フィッシャーラットを用い、粉餌にCsAを含む食餌を与えた群(CsA群)と粉餌のみの群(Control群)の2群に分け飼育した。8、16、30日目に屠殺し、下顎骨及び血清を採取した。歯槽骨はマイクロCTにて三次元的に計測を行った後、脱灰薄切切片を作製し、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ染色(TRAP)を行い、破骨細胞数および骨芽細胞数について解析を行った。血中のカルシウム濃度と副甲状腺ホルモン濃度についてELISA法にて測定した。 【結果】 マイクロCT解析の結果、CsA群では8日目では下顎骨舌側固有歯槽骨の形態に差を認めなかった。CsA投与後16、30日後では有意に同部位の骨量及び骨梁幅の減少が観察された。しかし、セメントエナメル境から歯槽骨骨頂までの距離は30日後においても有意な変化を認めなかった。また、脱灰切片における破骨細胞数、骨芽細胞数の変化は歯槽骨に置いて認められなかった。 血中カルシウム濃度は実験期間中差は認めなかった。血中PTHの濃度はCsA投与8日目で有意な上昇を示したが、16、30日目ではControl群と差が認められなかった。 【考察】 CsA投与により骨代謝回転が亢進することが報告されている。本実験においても歯槽骨の海綿骨にCsA投与により骨量減少が早期に認められた。一方、セメントエナメル境から歯槽骨骨頂までの距離についてはCsAによる影響は少なく、アタッチメントロスを伴う歯槽骨破壊は生じていなかった。以上のことから、CsAのみでは歯周炎は発症しないが、固有歯槽骨骨梁の非薄化を誘発させることから、CsAは歯周病の進行を促進する一因子となる可能性が示唆された。
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