Research Abstract |
1.本年度の研究計画 本研究は3段階にわたる積み上げ式の研究実施計画をとっており,本年度はその第1段階として,地域の日帰り温泉利用者を対象にした実態調査を予定していた。共同研究者として加わった先行研究の中で,日帰り温泉を健康づくりに役立てる目的で利用している人は少ないこと,温泉に入浴することで疲労感は軽減しリラックス感が増すこと,循環動態への影響として血圧が低下すること,温泉利用者には腰痛,肩こり,関節痛など骨関節系の自覚症状をもつ者が多く,入浴後にはそれらが有意に改善することを既に明らかにしており,本年度はさらに科学的な検証を進めるべく,泉質や入浴時間,利用頻度と循環動態,QOLの関連を明らかにすることを目指し,文献検討,調査計画の立案,実施まで行う予定であった。 2.本年度の研究成果 文献を読み進めるうち,温泉入浴の効果は温浴そのものによる影響が大きく,それに温泉成分や転地作用など複合的な因子が加わり,非常に複雑であることが分かった。身体的側面からは循環器系,呼吸器系,内分泌系,免疫系などから様々な検討が行われているが,エビデンスはいまだ明らかでない。また温泉入浴の効果は,対象者にとって主観的な効果が非常に大きいことが分かった。 それらの事実を踏まえて,65歳以上の高齢者を対象に血圧測定ならびに食事や運動を中心とした日常生活調査,骨関節系の機能評価,SF36を用いた健康関連QOLの調査を行い,温泉利用者と非利用者間で比較検討を行うことを計画した。現在,調査項目の調整や測定機器の準備を行っている段階であり,18年度の調査実施を目指している。 「介護予防」を目指した取り組みが求められている現在,身近にある日帰り温泉施設を高齢者の健康や福祉に役立てることは非常に意義あることと考える。そのためには自治体との連携や住民の疲労回復や気分転換にとどまらない健康づくりを目指した温泉利用への意識の転換が必要であり,今後の課題である。
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