Research Abstract |
本年度までに作成した,術後せん妄発症要因や発症プロセスに関する概念図に基づき,術後せん妄の発症状況について調査を行った。 診療記録からのデータ収集を行い,術前・術後の発症要因の内容と術後せん妄の徴候と考えられる行動内容について抽出した。これら発症要因と徴候について概念図により分類し,発症に関わる要因の特定を行った。また,発症早期に見られる徴候の内容についても事例的に分析を行い,前駆的に現れる徴候抽出した。 さらに,各事例を術後せん妄発症のプロセス概念図に添って経過を追い,文献検討やエキスパートからの聞き取り調査の結果から得られた術後せん妄の発症を高めるリスク因子の有無と,発症の状況についても分析を行い,予測に関わる因子について抽出した。これら分析により,年齢,身体状況の悪化,術後せん妄を悪化させる薬剤の使用,術前からの強い不安などが上げられた。 現在,これら抽出された予測に関わる組み込んだ,調査用紙を作成しており,これら因子の有無や程度,状況による術後せん妄発症頻度について前向きに調査をする準備を行つている。 今回の研究においては,事例研究的な分析を行うに留まっているため,一般化を行うには今後の更なる継続的な研究によりより多くの症例数が必要である。しかし,各症例を詳細に見ているため,得られた結果については実際の状況がよく反映されていると考えられる。また,今までに行われている研究の結果を支持するものともなっていると考える。実際め診療記録や事例からの分析を行い,積み重ねて行くことで,術後せん妄の発症予測と予防の方策を考察する上で,本研究の結果は,その基礎的な部分を補強するものが得られたと思われる。
|