Research Abstract |
人工肛門造設術を受けた患者(以下オストメイトと略す)は,入院中よりも退院後の方が悩みを多く抱えているといわれている。そのため,退院後のオストメイトの社会復帰や自立支援に対しては,医療機関のみにとどまらず,他機関と協力した組織的な患者教育体制をつくることが必要である。 そこで,本研究では,福岡県オストミー協会所属のオストメイトとET看護師と協力しながら,医療機関・企業・大学による組織的な教育的アプローチを明らかにすることを目的とし,健康教室を実施かつその成果について研究を行ってきた。 健康教室については,筑豊地区在住のオストメイトを対象に,7月,10月,11月に実施した。ここでは,ストーマケアに関する集団学習の後,ET看護師から個別指導を受けるという形式をとり,オストメイトのセルフケア自立に貢献した。また,健康教室に参加しているオストメイト20名から学習ニーズのインタビュー調査を行い,組織的な教育的アプローチの成果について検証してきた。その結果,健康教室に参加した当初は,「ストーマケアに対する知識や技術」に対する学習ニーズが中心だったが,参加回数が増えていくことで,「精神的サポートを含めた学習」を求めていた。このことは,オストメイトにとって健康教室が,ストーマケアの学習の場のみにとどまらず,自己の心情を互いに吐露し合う共感的理解の場としても機能していることを意味しており,自立支援と地域貢献に大きく寄与できたと評価できる。さらに,この調査結果については,先の第64回日本教育学会(8月;東京),第36回日本看護学会老年看護(9月;鳥取),第36回日本看護学会看護管理(11月;奈良)において研究発表を行い,患者会と医療機関,そして大学が共につくる組織的な教育体制の先駆けとして高い評価を得た(日本看護学会論文集に掲載予定)。ここでの成果をいかし,平成18年度は,ET看護師のみならず福祉用具相談員からの専門的な知識の提供やオストメイトどうしのワークショップ等を取り入れる事で,学習者中心の患者教育の実現に一層貢献したいと考えている。
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