2006 Fiscal Year Annual Research Report
看護師のワークプレイストラウマに対する脆弱性、回復力に関する研究
Project/Area Number |
17791662
|
Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
新山 悦子 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (80389030)
|
Keywords | 心的外傷 / コーピング / 気分転換 |
Research Abstract |
看護師が職場において心的外傷を体験することは,よく知られている.外傷反応は通常,時間の経過に伴って軽減するが,中には反応が高いまま持続する者が存在する.この外傷反応の回復を左右する因子の1つとして被害者のコービング方略が指摘されている.本研究の目的は,看護師の職場における外傷体験者のうち、広義の外傷体験者を抽出し,外傷体験の内容を明らかにするとともに,持続群におけるコーピング方略の特徴を抽出することとした. 方法は、2県の病院に勤務する看護師(准看護師、助産師を含む)782名を対象に、1週間の留め置き法による無記名の自己記入式質問紙調査を実施した。結果は、有効回答者592名、(男性5名,女性587名)のうち,なんらかの心的外傷を体験している看護師は331名,(55.91%)で平均年齢は36.26±9.81歳であった.職場でなんらふめ心的外傷を体験しており,外傷体験「直後」のIES-R得点が25点以上である女性看護師は301名であり,「現在」のIES-R得点が25点未満である回復群は50名,25点以上である持続群251名であった.収集された301名の自由記述について,各々直面の仕方による体験率をみたところ最も多かったのは,直接外傷体験で66.8%,次いで目撃外傷体験31.9%,最も少なかったのは聞く外傷体験で1.3%であった. 直接外傷体験の体験内容および体験率は,「直師からの暴言や非援助的態度」(24.4%)等全体で17カテゴリーが抽出され、目撃外傷体験の体験内容および体験率は,「患者・患児の悲惨な状態」(27.1%)等全体で13カテゴリーが抽出された.聞く外傷体験の内容および体験率にっいては,「患者の自殺」(50.0%)等計3カテゴリーが抽出された. 外傷体験のある看護師における回復群と持続群のゴーピングの比較は、対象者を持続群(n=251)と回復群(n=50)の2群に分け,コーピング尺度の各因子の平均得点を比較した.その結果,すべての因子において両群間で差がみられ,「積極的行動」「ポジティブ思考」「認知的回避」「思い任せ」「トーキング」の各因子については持続群のほうが回復群よりも得点が高く,「気分転換」の因子については回復群が持続群よりも得点が高いことが示された.本研究の結果から,「積極的行動」「ポジテイブ思考」「認知的回避」「思い任せ」「トーキング」を用いると外傷反応の持続につながり,「気分転換」を用いることが外傷反応を回復につながる可能性が示唆されたことは意義深い.しかし,本研究の結果は限定された地域の看護師からサンプリングしたものである.また近年,コーピングの組み合わせによるストレス反応の低減による報告もある.これらのことから今後は,尺度の信頼性`妥当性を高めるために対象者を広げてさらに改訂していくことと,コーピングの組み合わせによる心的外傷反応の推移を検討していく必要がある.
|