Research Abstract |
【目的】 本研究は,腰部負担軽減を考慮した要介護高齢者のおむつ交換技術の開発を目的としている.今年度は,臨床場面を設定した実験下において,生体力学的評価を用いた腰部負担の評価を試みた. 【方法】 1.対象:高齢者のおむつ交換に関してほぼ一定の手技を有する看護・介護職5名(平均年齢30.8±4.7歳,平均身長161.8±5.3cm,平均体重48.6±4.6kg).要介護者モデルは寝たきり度C2を想定した。 2.おむつ交換作業:(1)ズボンを下ろす,(2)おむつを開く,(3)おむつを換える,(4)おむつを閉じる,(5)ズボンを上げるという5工程を基本とし,ベッドの高さは50cmとした. 3.測定項目:各工程から腰部負担につながると判断した13の動作を抽出し,解析した.1)バイオメカニカル解析:瀬尾らが開発したソフトを用いて,体幹前傾姿勢,L5/S1最大モーメント比,腰部椎間板圧縮力を算出した..2)筋電図:左右の脊柱起立筋・僧帽筋・上腕二頭筋の最大随意筋収縮に対する%値.(%MVC)を求めた.3)操作力:床面のフォースプレートとベッド側面の6分力センサーの合力から手にかかる力を推定した.4)その他:主観的評価(8部位5段階評価),バイタルサインなど 【結果】 1.バイオメカニカル解析:おむつ交換全工程を通してほぼ一定の値を示し,体幹前傾角度は60度前後,L5/S1最大モーメント比は20%前後,腰部椎間板圧縮力は1500N前後であった. 2.筋電図:左右の脊柱起立筋・僧帽筋・上腕二頭筋を合わせた%MVC値は10〜30%であり,(1)ズボンを下ろすと(5)ズボンを上げるでは約25-30%,(3)おむつを換えるでは約15-20%と高い傾向を示した. 3.操作力:おむつ交換全工程の手にかかる力の平均は12.0±2.7Nであり,(1)ズボンを下ろすと(5)ズボンを上げるでは約20-25N,(3)おむつを換えるでは約10-15Nと高い傾向を示した. 4.主観的評価:負担感は,腰が平均3.6±1.0点と最も強く,次いで大腿,上腕,下腿,足首の順だった. 【考察】 腰部負担が高いのは,おむつ交換に伴うズボンの着脱や体位変換など力を要する動作であった.生体力学的指標により,作業に伴う力や負担の分散がみえ,腰部負担評価に有用であることが示唆された.
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