Research Abstract |
市町村母子通所教室における広汎性発達障害の疑いをもつ児と母親への支援の実態と課題を明らかにし,教室のあり方を検討するため,市町村保健師7名にインタビュー調査を実施し,内容分析を行った。結果,教室の課題として,1)親の子どもの発達に対する認識不足や教室に対する偏見による参加困難,2)保健師の専門的知識の不足と親への説明の困難さ,3)子どもおよび親に対するプログラムの模索,4)スタッフ不足による個別対応の困難さ,5)発達障害の専門職種からのアドバイスの不足など,母子が教室を利用するまでの課題と教室運営上の課題があげられた。一方,母子が教室を利用するための取り組みとして,1)健診における親への説明の工夫,2)健診後の家庭訪問による個別フォロー,3)2歳6ヵ月児健康相談の実施,4)発達相談員による個別相談の実施と連携があげられ,支援が必要な母子をできるだけ3歳児健診までに把握し,早期支援に結びつくよう努めていることがわかった。また,教室運営上の取り組みとして,1)個別相談時間の確保,連絡ノートの活用,家庭訪問により,親の子育てに対する不安や悩みの軽減と親が子どもの成長を確認でき,ネガティブな認識をポジティブなものに変えられるよう努めていること,2)母子分離による親の学習会や交流会の実施により,親の知識の習得や仲間づくりを促進していること,3)子どもの個別性に合わせ遊びの選択肢を増やしたり,子どもが理解できるよう視覚的な工夫を行い,子どもの発達を促進する工夫を行っていること,4)児童デイサービスや通園施設を紹介し,子どもの発達に適切な保育・療育環境を提供していることが示された。母子通所教室は障害が未確定の時期からのアプローチであり,障害の進行を早期予防する上で大きな意義をもつ。しかし,教室での親に対するプログラムはまだ模索段階であるため,今後内容を検討し充実させていくことが課題である。
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