2017 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical study of shifting viewpoints and representations in the discourse of A-bomb Experience
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17F17014
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川野 徳幸 広島大学, 平和科学研究センター, 教授 (30304463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VAN DER DOES LULI 広島大学, 平和科学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 平和 / 原爆被爆体験 / 核兵器廃絶 / 記憶継承 / 言説分析 / メディア / アイデンティティ / 観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度における研究実績は、次のとおりである。①一次・二次資料の収集、②新規データベース構築(電子化、タグ付け)、③言説の変遷理論モデルの構築と汎用性のテスト、および④中間報告(学術誌、学会発表など)。何れも計画に沿って遂行できた。①は、国内外で収集した。収集資料をもとに、②新規4種類のデータベースを構築している。それらを用いてデータ解析、言説分析を行い、③理論構築を展開中である。被爆者らの継承についての期待や思いと、「語り継ぐ」という従来の継承方法の考え方を明らかにした。それに対して、継承者による自発的な継承行動参加の可能性を仮説として、言説変遷と動員の理論モデルに組み込み、その構築と汎用性の確認を行っている。成果として、④中間報告は、欧州研究会議(ERC)助成による欧州アジア研究学会国際シンポジウム、ロンドン、ドイツ、日本の国際会議などで招聘を受けて発表した。口頭発表をもとに、現在、国際学術誌への投稿論文をまとめている。広島大学と広島市平和文化センター広島平和記念資料館の学術的協力合意体制に則り、同館の訪問者による原爆体験継承の可能性を探った。言説変遷と動員の理論モデルを適用し、多領域横断型分析手法を用いて、インターネットのグローバルサイトにおける広島平和記念資料館の訪問者による偶発的・能動的な参加型原爆体験継承の可能性を明らかにした。成果は『広島平和科学39』にまとめた。さらに、平和記念資料館と本センター共催の公開市民講座で、広く研究成果を市民と共有し、全国・地方新聞を介して参加型継承への問題提起に貢献した。逆説的に、インターネット上で、原爆・被爆体験や核兵器の描写傾向とその頻度の変遷が、原爆体験と戦争記憶の喪失・忘却(改竄と誤解を含む)を悪化させる要因となる現象にも注目し、欧米の先行研究と比較した。成果として、「当事者性」が継承内容に与える影響を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記計画4項目の進捗状況は以下のとおりである。①原爆体験継承に係る資料三種を国内外で収集し、膨大な資料を現在整理中である。これらは、①(1)被爆者の個人記憶の一次資料(アンケート回答、証言集、手記、被爆者による絵と説明書き)、①(2)原爆体験の記述や展示に対する読者・視聴者反応(展示への反応の聞き取り、ソーシャルメディア投稿)、および①(3)原爆体験継承に係るメディア報道(新聞記事)を国内外で収集した。②新規データベースとして、膨大なデータ入力、電子化タグ付けしたデータ集を構築中である。現在までに構築完了した解析用データセットは、次の4種である。総例数は1万5000例を超える。②(1)広島大学平和科学研究センター(現・平和センター)と朝日・読売各新聞社共同で行った一連の被爆者アンケート調査結果のうち、既存の自由回答文を抽出し、設問に最も誘導性が少ない質問への回答を解析可能な形式に加工したデータベース6種、②(2)朝日新聞社2005年及び2010年被爆者証言集データ、②(3)証言集より2005・2010年の双方で証言している被爆者の回答を抽出したサブセット及び被爆の種類、爆心地からの距離などの変数を作成しデータ化したもの。さらに、②(4)原爆に対する一般大衆の認識の指標として、2009年から2017年11月20日までに投稿された広島平和記念資料館に関するTripAdvisorへの口コミ971件並びに投稿年月日及び投稿者居住地をデータ化した。以上のデータ収集及び構築作業により、基本的分析用データベースの準備が整った。さらに、②の(1)と(4)を用いた解析結果の一部は、査読付き論文として発表し、公開市民講座で市民と成果を共有した。言説の変遷と動員の理論モデルの構築と汎用性の確認を行い、中間報告は、国際会議などで招聘を受けて発表した。現在、国際学術誌への投稿論文をまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、原爆・被爆体験という負の個人記憶が、どのような社会・経済・政治・精神的環境において、世界の恒久的平和を訴える国際的集合記憶へ昇華していったのか、変遷の過程を明らかにする。その上で、将来原爆体験の記憶をどう伝えていくか、記憶を受け継ぐ側が、能動的に継承の努力に参加し、国や言語の枠を超えて伝播していくためには、何をすべきかを考察し、産官学民が一体となって協働する具体的な方策を提唱する。具体的には、以下の6項目である。⑤国内外の原爆体験継承に関する追加一次資料の収集・整理・データベース完成。⑥新規・既存データベース(各種被爆者アンケート)を比較分析可能に対応させるための再構築及び再階層化。⑦定量データ分析、定性分析、結果の相互検証と解釈。⑧言説の変遷と動員の理論モデル構築。⑨同理論モデルを用いて、原爆体験における言説変遷の軌跡と要因・結果を解明・体系化。⑩原爆体験継承における被爆者とヒロシマの自己アイデンティティ変遷の理論化。以上の目的のために、平成30年度は、29年度に収集した資料補強が必要な部分の追加一次・二次資料の収集と整理を行い、データベースを完成し、多領域横断型分析手法で統計解析および言説分析を行う。原爆継承に関する言説変遷と動員の理論モデルを構築する。これは、多元的手法を用いて、言説に関与するイデオロギーの変遷を実証的に同定するものである。原爆体験の「語り」のパターンが、どんな社会経済的、政治的、または精神的な条件下で、どのように形成され、いかなる主体が関与するコミュニケーションにおいて、特定の言説のコミュニティが生まれ、異なるコミュニティ間で言説(語り)のパターンの同化・吸収が起ったのか説明する。成果は、英国アジア研究学会など国内外の国際学会および査読付き学術誌で発表するほか、国内外の共同研究者と共著の書籍として発表する。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Comparative Analysis Of The Prevalence Of Congenital Heart Defects In The East Kazakhstan Region2017
Author(s)
Rakhypbekov Tolebay K., Madkyeva Madina, Chaizhunusova Nailya, Rymbaeva Tamara, Berekenova Gulnara, Abylgazinova Aizhan, Hoshi Masaharu, Kawano Noriyuki, Inoue Ken, Takeichi Nobuo, Noso Yoshihiro, Kobayashi Shotai
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Journal Title
Shimane Journal of Medical Science
Volume: 34
Pages: 13-19
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 1. Radioactive micro-particle effects experimentally and theoretically, 2. Air dust sampling and measurements, 3. Dosimetry and radiation risk studies in Semipalatinsk area2018
Author(s)
Hoshi M, Ohtaki M, Otani K, Fujimoto N, Shichijo K, Endo S, Sambayev Y, Zhumadilov K, Sakaguchi A, Yamamoto M, Chaizhunusova N, Stepanenko V, Shinkarev S, Apsalikov K, Muldagaliev T, Inoue K, Noso Y, Kawano N.
Organizer
21st Hiroshima International Symposium: Studies on health effects of exposure to radioactive micro-particles
Int'l Joint Research
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[Presentation] Calculations of dose distribution on the spatial microlevel around 56Mn micro-particles incorporated into biological tissue: preliminary result2018
Author(s)
Stepanenko V, Hoshi M, Endo S, Ohtaki M, Otani K, Fujimoto N, Shichijo K, Kawano N, Sakaguchi A, Chaizhunusova N, Sayakenov N, Uzbekov D, Shabdarbaeva D, Aukenov N, Zhumadilov K, Kaprin A, Galkin V, Ivanov S, Yaskova E, Belukha I, Kolyzhenkov T, Akhmedova U, Bogacheva V, Elagina V.
Organizer
21st Hiroshima International Symposium: Studies on health effects of exposure to radioactive micro-particles
Int'l Joint Research
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