2017 Fiscal Year Annual Research Report
Novel electronic states of Mott insulators induced by electric current
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17F17027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 京都大学, 理学研究科, 教授 (80181600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SOW CHANCHAL 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 非平衡定常状態(NESS) / NESS / モット絶縁体 / モット半金属 / 巨大反磁性 / ルテニウム酸化物 / スイッチィング |
Outline of Annual Research Achievements |
◆初年度は、主な研究対象のルテニウム酸化物Ca2RuO4について、直流電流誘起の半金属状態及び巨大反磁性に関する研究を進め、温度・電流密度相図も構築した。電流誘起の巨大反磁性の発見に関するSowを首著とする論文は、11月にサイエンス誌に掲載された。これまでの成果は、9月の日本物理学会でのシンポジウム講演等でもSowが登壇して発表した。 ◆このような非平衡定常状態(Non-Equilibrium Steady State; NESS)のCa2RuO4については、結晶軸方向に対する直流電流と磁場の方向依存性測定も進め、巨大反磁性を含む電流誘起創発現象の異方性の詳細を明らかにした。さらに、東北大学IMRにて15テスラまでの強磁場下での電流誘起巨大反磁性の振舞の測定に着手した。 ◆研究に必須となるCa2RuO4の純良単結晶の育成については、中村文彦教授(久留米工業大学)の研究室にSowが滞在して技術を高めた。久留米工業大学及び京都大学で育成した結晶は、国内はもちろん、米国・韓国・スイス・カナダなどのグループにも提供しての国際共同研究を展開している。 ◆これらと同時に、モット転移温度が一桁小さな、関連酸化物Ca3Ru2O7(研究協力者のNIMS菊川博士が京都大学で育成した単結晶試料を使用)でも同様の現象の確立を目指して測定を進めた。 ◆なお、JSPSサイエンス・ダイアログプログラムに参加し、2018年1月に宇治市の高等学校にて、約40名の高校2年生に対する英語での出前授業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
◆達成済み: ルテニウム酸化物モット絶縁体での、電流誘起の巨大反磁性の発見に関する最初の論文がサイエンス誌に掲載された。また、関連の2層系ルテニウム酸化物に関しても同様の現象を見出し、精密測定を進めた。
◆現在取組中: 非平衡定常状態(NESS)での低温での磁性と輸送特性の精密測定という、新しい研究課題で必要となる技術的問題に取り組んでいる。具体的には、磁化測定でのバックグラウンド信号(試料ホルダー、温度計他)を格段に小さくすることで測定確度を向上させる装置改善、また、避けがたい発熱のもとでも試料温度を正確に測定できるような装置改善に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
◆2層系ルテニウム酸化物における、非平衡定常状態(NESS)でのスイッチング現象についての実験をさらに進めて、その研究成果を論文投稿する。
◆NESSでのルテニウム酸化物で我々が発見した現象の一般性を明らかにするために、ルテニウム酸化物以外のモット絶縁体での同様の現象を探索する。具体的にはイリジウムのペロブスカイト酸化物やパイロクロア酸化物で、研究協力者から入手した単結晶試料を用いての実験を進める。
◆これまでの研究成果の発表のため、Sowによる口頭講演が決まった20118年7月の磁性国際会議(ICM-2018, San Francisco)に参加し、国際共同研究の相手との情報交換・研究打ち合わせを行う。日本物理学会でも成果の発表を行う。
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Research Products
(11 results)