2017 Fiscal Year Annual Research Report
脱水素型C-C結合反応を用いたイオン伝導性有機構造体の合成
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17F17044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 進 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (20140303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG GEN 京都大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | イオン伝導 / 有機構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、共有結合から構築される有機構造体(Covalent Organic Framework, COF)の新規合成を行い、特に固体イオン伝導体として展開することを目的としている。研究代表者が得意とする、各種骨格構築反応(脱水素型C-C結合反応など)を利用し、二次元~三次元の結晶性構造体を合成し、その内部にイオンを輸送する置換基を精密かつ高密度に導入することにより全固体で高いイオン輸送特性を示す材料を設計する。そして応用展開として全固体二次電池への適用を目的とする。 有機構造体(COF)は一般的に複数の有機溶媒の混合系から自己集合的に合成されるが、その反応時間は長く、また得られる構造には多くの欠陥が存在することが知られている。初年度の研究ではこのCOF構築プロセスの改善、および新規の一次構造、二次構造の構築を目指し様々な有機合成プロセスを試した。結果、一度(従来の方法で)合成したCOF結晶を再度モノマーが溶解した溶媒中へ投入し、固液界面反応を促進することにより、ダイナミックにモノマー再配列が進行し、高い結晶性を有するCOFが得られることを見出した。この発見を展開し、複数のモノマーを均一あるいは不均一に単一結晶子に導入した階層型COF構造の合成に成功した(J.Am.Chem.Soc.2018,140,2602.)。この多段階処理によるCOF構造の化学修飾法により、本目的であるイオン輸送部位の導入が可能となり、これまで二次元レイヤー状COF内部に長鎖アルキル基やポリエチレングリコール鎖を高密度に導入した構造の合成に成功している。これらは目標とする固体イオニクス材料の基盤材料として高いポテンシャルを有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果から、COFの結晶構造構築プロセスを制御し、様々な構造や欠陥特性を制御できる新たな手法を見出している。また構造内部に動的かつイオンを輸送できる部位を導入できる手法を見出し、それら化合物の熱安定性や側鎖のガラス転移特性をTGA, DSAから見積もり、固体でありながら高い内部運動を実現していることを確認した。本研究ではこれまで世界的に見ても検討されていない「非多孔性」のCOFをイオン輸送場として用いることが進捗の鍵となるが、上記成果はイオニクス材料として設計、展開するための重要な知見を含んでいる。そのため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた機能化COF、特にポリエチレングリコール鎖が高密度に導入されたCOFを用いたイオン伝導特性の発現およびデバイス化を検討する。リチウムイオンの導入により固体状態においても高いイオン伝導度が期待され、それを利用した全固体リチウムイオン電池の作成も検討する。またクライオTEM装置、固体NMR装置等を利用し、得られた機能化COFの構造および動的構造を定量的に解析する。イオン伝導特性と化学修飾部位の構造の相関を明らかとし、イオン輸送特性(伝導度、伝導温度、化学安定性)の高度制御を実現する。
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Research Products
(1 results)