2017 Fiscal Year Annual Research Report
Control of spin-charge conversion in metallic systems
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17F17066
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藤 和也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30579610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AN HONGYU 慶應義塾大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Cuの自然酸化により見出された巨大スピンホール効果を足掛かりに、金属へテロ構造における電流からスピン流への変換とこれに伴い現れるスピン軌道トルクの制御手法確立を目指すものである。本年度は、強磁性金属/Pt酸化物構造におけるスピン軌道トルクの測定を系統的に行い、スピン軌道相互作用の弱いCuと同様に、Ptにおいても酸化によってスピン軌道トルクの生成効率が増大することを明らかにした。また、強磁性金属に対して数桁抵抗率の大きいPt酸化物を用いても巨大なスピン軌道トルクが生成されることを見出し、これを用いて酸化物絶縁体/強磁性金属/酸化物絶縁体という構造における電流誘起磁化反転を実現した。本現象は強磁性金属/酸化物絶縁体界面のスピン軌道相互作用により駆動される現象であり、酸化度依存性を強く示す。そこで、外部から電場により本素子内の酸素イオンを駆動し、界面付近の酸化度の制御を試みた。電流・電圧測定の結果から不揮発な酸素移動が確認され、この酸素移動によって、スピン軌道トルク効率をリバーシブルに変調可能であることをスピントルク強磁性共鳴測定により明らかにした。また、金属酸化物に加え、表面・界面スピン軌道相互作用の効果顕在化が期待される金属超薄膜を用いたスピン軌道トルクの定量を平行して進めた。この結果、極薄膜領域におけるスピン軌道トルク生成効率の増大が観測された。現在のところこの起源は明らかではないが、表面への酸化物膜形成により、スピン軌道トルク効率が変化することを実験から明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、Cuにおいて初めて見出された酸化によるスピン軌道トルク効率の増大は、スピン軌道相互作用の弱い金属に限らず、既に顕著なスピンホール効果を示し、スピン軌道トルク源として既に多くの研究が進められてきたPtにおいても発現することが明らかになった。Pt酸化物を用いることで、絶縁性のスピン軌道トルク源が実現され、スピン軌道トルクからバルクスピン軌道相互作用からの寄与を完全に排除した、純粋に界面スピン軌道相互作用によるスピン軌道トルク生成を定量することが初めて可能となった。スピントロニクス素子におけるスピン軌道トルク研究の困難は、バルク・界面効果の分離にあったが、今回の研究により明らかとなった絶縁性スピン軌道トルク源を用いることで、スピン軌道トルク生成メカニズムの解明に向けた理想的環境が整ったと言える。以上のことから、 本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、純粋に界面スピン軌道相互作用のみによって発現するスピン軌道トルクを定量するスピントロニクスへテロ構造が明らかとなった。残りの研究期間では、この系を用いることで、金属酸化物によるスピン軌道トルクの生成メカニズム解明を進める。具体的には、絶縁領域におけるスピン軌道トルクの酸化度依存性を系統的に測定し、界面酸化度とスピン軌道トルク効率の相関を明らかにする。また、金属超薄膜において明らかになった効果的スピン軌道トルク生成のメカニズムを明らかにするため、イオン液体を用いたキャリア変調を組み合わせた定量を進める。
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Research Products
(4 results)