2017 Fiscal Year Annual Research Report
Influence of development of orogeny and monsoon climate on plant biogeography in East Asia
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17F17094
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HUANG YONG-JIANG 千葉大学, 園芸学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-07-26 – 2020-03-31
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Keywords | 鮮新・更新世 / 山地形成 / アジアモンスーン / 植物地理 / 大型植物化石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,後期中新世および鮮新・更新世の山地形成とアジアモンスーン気候の発達が,東アジアのフロラ形成に及ぼした影響を明らかにすることを目的とする.本年度は,千葉大学大学院園芸学研究科所蔵の,近畿地方中部の前期更新世産大型植物化石を主に検討した.そのうち,ミツバウツギ属種子化石とパロティア属果実化石について昆明植物学研究所所蔵の中国産現生植物標本や既存の文献資料をもとに形態学的比較検討を行い,日本産化石種の類縁関係を検討した. ミツバウツギ属種子化石はミツバウツギと中国に分布する現生種Staphylea holocarpaに近縁な化石種の2種が産出した.ミツバウツギは日本の広い地域の鮮新・更新統から産出するが,ミツバウツギ属化石種は紀伊半島北部の下部更新統からしか化石記録がなかった.日本での分布域が限定されていたことと,ミツバウツギよりも温暖な地域に現生の近縁種の分布が限られていることから,第四紀の後半の環境変化により日本から絶滅しやすかったと考えた.化石群の種構成から復元した古気候の変化や,化石産地周辺の古地形変化などに基づき,ミツバウツギ属の分布の違いによる絶滅と残存のプロセスを考察した. 東京西部の地層に含まれるブナ葉化石の気孔密度からの後背地の標高推定のため,現生ブナ葉の標高別サンプリングを行い,化石データと比較した.その結果,葉化石群が高標高域から運搬されており,化石からの後背地の高度推定が可能であることが明らかになった.モンスーン発達と山脈形成の開始前の葉化石群として古第三紀神戸層群産の葉化石の検討もあわせて行った. 研究成果を国際植物学会およびNECLIME meetingで発表するとともに,国際誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関して,3編の論文を国際誌に投稿した.一方,当初考えていたカリア属の研究は,中国でのハーバリウム調査の結果,成熟した果実を含む標本が極めて少なく,比較検討が必要な果実の内部構造を調べるために標本を破損することが難しく,今後,現地での採集が必要であることがわかった.そこで,研究対象の一部を別の分類群に変更した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,中部日本の新第三紀・第四紀産植物化石の形態学的検討をさらに進め,中国現生種との比較検討を行う.特に,魚沼層群および瀬戸層群産の堆積物からの種実化石を採取をすすめる.種子化石は表面や断面の構造や微細形態を,実体顕微鏡,落射蛍光顕微鏡,走査電子顕微鏡を用いて観察し,国内および中国の標本庫所蔵の現生標本と比較,日本産化石種の類縁関係を明らかにする.日本と中国の山地植生の分布状況について文献ないし現地で調査を行い,植物・植生分布と気候・地形との環境要因との関係を明らかにし,化石データと比較することで,古植生・古環境復元を行う.
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Research Products
(6 results)