2018 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムマイニングに基づく異宿主発現による新規ラッソペプチドの生産
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17F17095
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 真也 静岡大学, 農学部, 准教授 (20510621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JAIN RAKESHKUMAR 静岡大学, 農学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | ラッソペプチド / 異宿主生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラッソペプチドとは、その構造的特徴から命名された抗菌ペプチドのグループの名称でる。現在までに数々のラッソペプチドがαプロテオバクテリア、大腸菌および放線菌から単離・構造決定されている。構造の特徴は、20-30残基のアミノ酸からなるペプチドにおいてN末端のアミノ基が、N末から9-10残基目に存在するアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の側鎖のカルボキシル基とペプチド結合を形成し、“輪”を形成する。さらにC末端の直鎖部分が輪の中を貫通するという特異な立体構造を有しており、その構造が“投げ輪”に似ているためラッソペプチドと呼ばれている。その生合成は非常にシンプルであり、大腸菌の代表的ラッソペプチドmicrocin J25の場合、構造遺伝子mcjA、修飾酵素mcjBおよびC、トランスポータmcjDとわずか4つの遺伝子で生産されることが明らかとなっており、ゲノム情報から生合成遺伝子の予測が容易である。昨年度得られたLuteimonas abyssi DSM25880ゲノム由来のラッソペプチドの生産量の向上の検討を行った。さらに、Brevundimonas vesicularis NBRC12615株のゲノム情報に、新規ラッソペプチドの生合成遺伝子クラスターを見出した。そこで、プライマーDNAを合成し、遺伝子クラスターの全長をPCR法で増幅した。増幅した断片は、制限酵素で消化し、発現用プラスミドに組み込んだ。エレクトロポレーションを行い、生産菌に遺伝子導入することに成功した。異宿主生産を行うための培養実験をおこない、新規ラッソペプチド生産することに成功した。現在、マクロラクタム環部分のアミノ酸配列を組み換え、生理活性ラッソペプチドの生産を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Luteimonas abyssi DSM25880ゲノム由来のラッソペプチドの生産量の向上の検討を行ったが、生産量の向上が難しかった。さらに、Brevundimonas vesicularis NBRC12615のゲノムに新しいタイプのラッソペプチド生合成遺伝子クラスターを発見したため、異宿主生産を行った。当初は生産量が少なかったが、各種の培養条件の検討を行ったところ、構造決定および活性試験に十分な量のペプチドが得られる目処がついた。さらに、生理活性を持たせるためにプロテアーゼ耐性の強いマクロラクタム環のアミノ酸配列の組み換えを行い、組み換え体が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Brevundimonas vesicularis NBRC12615のラッソペプチドの生合成遺伝子クラスターの発現ベクターへの組み込み及び、実際のラッソペプチド生産に成功している。さらに有用なラッソペプチドを創出するため、遺伝子の組み換え実験を行い、塩基の置換に成功した。今後は、アミノ酸レベルで変異が導入されているかどうかを検討し、導入されていいれば、大量培養を行い、有機溶媒抽出、各種クロマトグラフィーによる分画を行い、最終的にHPLCを用いてペプチドを単離・生成する予定である。構造決定に必要なペプチドの量が得られれば、NMR,ESI-MS等を用いた構造解析を行い化学構造を決定する。同時に、抗菌活性試験等の生理活性試験を行い、有用性を評価する。
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