2017 Fiscal Year Annual Research Report
Developing forest distribution model for better understanding of climate change impacts on forest
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17F17109
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Research Institution | Tokyo University of Information Sciences |
Principal Investigator |
原 慶太郎 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (20208648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHARMA RAM 東京情報大学, 総合情報学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | Remote seising / Vegetation / Satellite data / High-resolution / Mapping / Deep learning / Simulation / Climate change |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に対する陸上生態系の反応に関しては、個別の種や群落の分布予測の研究に留まっており、それらを用いた単一群落の生態系ニッチモデルでは、群落消失後の侵入群落など重要な生態学的課題を提示することができていない。大陸スケールでの衛星リモートセンシングによる植生図作成では、各気候帯における優占種の群落レベルでの分布状況は得られておらず、生態系というスケールでの研究に欠かせない分布域の特定は困難である。一方、近年では、高度な機械学習や空間情報技術を用いることにより、現地観測データと複数の衛星データから、全国のシームレスな森林分布図を作成することが可能になっている。本研究は、高分解能衛星データによる森林生態系(群落)分布図と、その分布に対応する環境変数を統合することにより、気候変動の影響をより的確に把握するための総合的森林分布のシミュレーションモデルを開発することを目標として研究を実施した。 初年度は、光学及びレーダー衛星データ(Landsat 8,Sentinel 1-2)から、スペクトル、テクスチャ、および地形のパラメータを抽出した。自然森林生態系は、特定の気候条件に適合した樹種によって構成され、特徴ある林冠の形態、テクスチャ、フェノロジーなどの属性をもっているが、この特性を用いて、森林分布図を、機械学習及び空間情報技術と現地データ(グランドトゥルース)を用いて作成した。既存の調査資料と新たに現地で取得する植生調査データをグランドトゥルースとして用いるために、2017年5月と6月に暖温帯の房総半島、冷温帯の東北地方を対象として、現地調査を実施した。高分解能の生態系(群落)分布図からは、森林生態系の構成や分布についての最新かつ詳細な情報を得る可能性が示唆された。研究の成果は、国内学会で発表するとともに国際雑誌Landに投稿し受理・掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、初年度は、光学及びレーダー衛星データ(Landsat 8,Sentinel 1-2,およびMODIS)から、スペクトル、テクスチャ、および地形のパラメータを抽出する。自然森林生態系は、特定の気候条件に適合した樹種によって構成され、特徴ある林冠の形態、テクスチャ、フェノロジーなどの属性をもっている。この特性を用いて、森林分布図を、機械学習及び空間情報技術と現地データを用いて作成する。既存の調査資料と新たに現地で取得する植生調査データをグランドトゥルースとして用いる。このために、気候帯を代表する北海道、東北地方と九州地方で現地調査を実施する。高分解能の生態系(群落)分布図からは、森林生態系の構成や分布についての最新かつ詳細な情報を得ることができる。研究の成果を、国内学会で発表するとともに国際雑誌に投稿する予定であった。 この計画に沿って、昨年度は、グランドトゥルースとして、暖温帯に位置する千葉県房総半島と、冷温帯に位置する東北地方の山岳地で実施し、解析結果の検証に充てた。2013-17年の日本全域にわたるLandsat 8, Sentinel 1-2の衛星データを取得し、植生タイプの分類に用い、マルチ・フィーチャー(分光特性、偏光、テクスチャ、地形など)及び多時期のデータセットを用意し、機械学習とクロスバリデーションに供した。衛星データの解析のために、機械学習によるランダム・フォレストとニューラルネットワークによる分類と植生タイプの地図化のプログラムを作成し解析した。この結果得られた植生図は、既存の同様な分類に比べて良好な精度をもつものであった。これらの成果は、山口で開催された写真測量学会で口頭発表するとともに、国際誌であるLand に投稿し採択された。以上のとおり概ね順調に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、複数のディープニューラルネットワーク(以下、DNNs)を用いて、日本における主要な植生タイプ(群落)ごとの植生図を作成する。まず、日本全域が観測された複数の衛星データ(Landsat-8/OLI、Sentinel-1/C-SAR、 Sentinel-2/MSI)を収集し、グラフィックスプロセッシングユニット(以下、GPU)を実装したDNNsによりデータを統合する。DNNsによる複数の衛星データの統合では、異なる衛星ごとのデータから、観測日が近いデータを用いることで、個別の衛星で観測が欠落している日のデータを予測することができる。この予測により、高空間分解能でありながら非常に高い時間分解能をもつスペクトル特徴量をもつデータセットが生成でき、さらに、地形的・地質学的な特徴量をグランドトゥルースデータと共に解析することで、植生分類およびモニタリングに向けた高解像度植生図の作成に利用できる。 植生図の作成には、気候、植物群落の相観、地形、優占種による基準を組み合わせて開発された新しい分類システムを用いる。また、植生図の作成に用いるDNNsは、マルチレイヤ・パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、畳み込みリカレントニューラルネットワークなど、複数のニューラルネットワークを用いる。解析の後には、各ニューラルネットワークを用いた植生タイプごとの植生図作成手法に向けた課題を議論する。 また、将来の生物多様性保全のための管理には、植生タイプごとの分布予測が有用な情報となる。将来における植生タイプごとの分布を予測するためのDNNsを用いたコンピュータシミュレーションモデルを開発する。主要な植生タイプ(群落)ごとの分布を制限する重要な環境条件を決定するために、高解像度の植生図、気候変数と地形的及び地質学的な変数を用いてシミュレートを行う。
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