2017 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳と東アジア――近代日本におけるPhilosophyの翻訳と植民地朝鮮への伝播
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17F17302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 希史 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80235077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HEO JIHYANG 東京大学, 人文社会系研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 京城帝国大学 / 哲学科 / 普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度の主な研究実績は、「京城帝国大学」研究チームとの共同作業および安倍能成に関する論文を発表したことである。また、安倍能成論の背景を叙述する目的で着手した京城帝国大学哲学科に関する史料調査を徹底的に行うことができた。 京城帝国大学は帝国日本が設立した6番目の帝国大学であり、その文系学部は、東北帝国大学の法文学部に倣い、法文学部として1926年に始まった。安倍が着任した哲学科を考察の対象するには、こうした歴史的経緯をふまえて、法文学部としての特徴、内地帝国大学の近代的学制の移植過程、植民地大学としての学制の特徴を具体的に把握する必要があり、京城帝大にかかわる先行研究においても、2010年度以来、学科ごとに焦点を絞った研究が進められている。しかし哲学科を対象とした研究に関しては、金載賢の論文が唯一のもので、具体的な検討はまだ行われていない。 本研究は、京城帝大哲学科の具体的な講座運営、講座担任教授および助教授、卒業生と学生の学問活動、哲学研究室に関する分析を試みた最初のものに当たる。これらの分析を通じて、今年度は、植民地になぜ普遍的学問といわれる哲学科が設置されたか、そして普遍的学問が植民地に与えた影響は何かについて検討した。また、哲学科を卒業した朝鮮人学生の戦後動向まで目をむけ、西洋哲学という近代的学問がかれらのキャリアにどのように影響したか、そして南と北という戦後韓国の分断とそれぞれの学問的状況にどのような痕跡を残したのかということについて考察した。現在、論文を執筆中であるが、29年度の史料調査によって、論証に必要な資料はおおむね蒐集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
29年度9月にソウル漢陽大学校で行われた学術シンポジウム「京城帝国大学研究」に参加することで、京城帝国大学の新進研究者と交流し、本研究を進める上で新たな知見を得ることができた。また外国人特別研究員として所属する東京大学大学院の東アジア人文学のゼミおよび研究会に参加し、東アジアにおいて西洋概念の翻訳とはどのようなものであったのかという大きな問題枠をさまざまな専攻分野の院生・研究者と共有できる場を得らえ、大きな励みとなった。11月からは科研費を用いた本格的な史料調査にとり組むことができ、研究の大きな進捗をみた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中である論文「京城帝国大学哲学科の磁場」を完成させ、日本の『朝鮮史研究会』と韓国の『時代と哲学』に発表し、6月までに博士論文出版のための作業を終える予定である。これらの活動によって、本研究課題の基本的なパースペクティブを確立し、今後の基盤としていくことを考えている。その上に立って、さらに井上哲次郎に関する史料調査を東京大学の図書館と史料編纂所を通じて行い、課題の問いを深化させ、問題の核心へと踏み込みたい。また、東アジア人文学にかかわるゼミや研究会に参加することで自らの課題を共有し、フィードバックができればと期待している。
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Research Products
(2 results)