2018 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線分光による時間・空間分解した遷移金属酸化物薄膜の磁性
Project/Area Number |
17F17327
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和達 大樹 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00579972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG YUJUN 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 空間時間分解 / シンクロトロンX線 / ペロブスカイト酸化物 / 薄膜 / X線磁気円二色性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、放射光X線による遷移金属酸化物薄膜の研究、特にその空間と時間を分解した測定の実現である。空間分解測定では薄膜の界面の電子状態の観測、時間分解測定では薄膜の表面界面の電子の軌道やスピン状態のレーザーによる制御を行う。そして、ナノメートルとフェムト秒のスケールで新しい物性を見つけることを目指す。 今年度具体的に得られた結果は下記のものである。ペロブスカイト酸化物をBeyond CMOS材料の一つとして利用するために、薄膜界面としてSrIrO3/LaMnO3の超格子薄膜の特性に注目した。現在までに、この接合で強磁性が報告されており、このメカニズム解明を目指した。そこで、SrIrO3/LaMnO3超格子薄膜に対し、シンクロトロン放射光X線によるイリジウムL端でのX線磁気円二色性の測定を行った。イリジウムが界面で強磁性となっていることが分かり、光電子分光の結果と合わせ、バンドダイアグラムの観点からこの界面の強磁性の理由が明らかになった。 この結果は、電圧印加によって入るキャリア数や格子変形の観測につながるものである。昨年度は、(La1-xSrx)VO3/Si界面において電圧印加による金属化に伴うXAFSスペクトルの変化が見られなかった。これは電圧印加によって入るキャリア数や格子変形が小さいためと考えらえる。その一方でイリジウム酸化物薄膜SrIrO3/LaMnO3接合では、電圧印加によって入るキャリア数や格子変形が大きいと期待できる。さらには、時間分解測定も組み合わせる。この場合は電圧パルスを用いることで、電圧印加による金属化と格子変形のダイナミクスを観測する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまでおおむね順調に進展している。これまでの研究で電圧印加XAFS測定の手法が確立された。この手法により、薄膜界面の電圧印加中、つまり動作中(オペランド)測定が実現することになった。今後、さらに時間分解測定も組み合わせる。この場合は電圧パルスを用いることで、電圧印加による金属化と格子変形のダイナミクスを観測する。また、フェムト秒スケールで強磁性状態を作る研究を行う。これまでは強磁性状態を壊す研究が多かったため、強磁性を作れれば大きなパラダイムシフトとなる。 上記のように、薄膜界面の特性における特異な現象のメカニズム解明に向け、時空間分解の測定手法が確立しつつあり、薄膜の空間も時間も分解する測定の実現がすぐそこである。Beyond CMOS材料をペロブスカイト酸化物薄膜で実現できる道が拓かれつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今度は下記のように研究を進める。現在までにX線吸収分光を用いた電圧印加XAFS測定の手法が確立された。この手法により、薄膜界面の電圧印加中、つまり動作中(オペランド)測定が実現することになり、実際のデバイスの動作を空間・時間分解する測定が本格的に開始している。さらに、SrIrO3/LaMnO3の超格子薄膜において、X線磁気円二色性測定により、イリジウムが界面で強磁性となっていることが分かった。今後は、Beyond CMOSを目指してSrIrO3/LaMnO3接合に対する電圧印加測定を行う。これまでは(La1-xSrx)VO3/Si界面において電圧印加による金属化に伴うXAFSスペクトルの変化が見られなかった。これは電圧印加によって入るキャリア数や格子変形が小さいためと考えらえる。その一方でイリジウム酸化物薄膜SrIrO3/LaMnO3接合では、電圧印加によって入るキャリア数や格子変形が大きいと期待できる。今後、さらに時間分解測定も組み合わせる。この場合は電圧パルスを用いることで、電圧印加による金属化と格子変形のダイナミクスを観測する。また、コバルト酸化物などの軌道やスピン状態が微妙なエネルギーバランスで決定されている系に対し、フェムト秒の時間幅を持つレーザーで励起し、特にフェムト秒スケールで強磁性状態を作る研究を行う。これまでは強磁性状態を壊す研究が多かったため、強磁性を作ることで大きなパラダイムシフトを目指す。
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