2017 Fiscal Year Annual Research Report
Structure and Reactivity of Localized Singlet-1,3-diyl Diradicals
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17F17340
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安倍 学 広島大学, 理学研究科, 教授 (30273577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SARKAR SUJAN 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 一重項ジラジカル / アゾ化合物 / 低温マトリクス / 赤外分光 / 電子共鳴スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応は結合の開裂と形成で成り立っている.化学反応が段階的に進行する際には,反応中間体と呼ばれるエネルギー的に不安定な原子価欠損型化学種が必ず存在する.その不安定化学種は生成物の直前の中間体であるため,その構造と反応性を明らかにすることができれば,生成物に発現する立体選択性や位置選択性を解明することができ,化学反応の本質を明らかにすることができる. 本研究では,原子価欠損型化学種の中でも,結合のホモリシス過程に介在する極めて寿命が短く取り扱いが困難とされる局在化一重項ジラジカルに焦点をあて,その構造と反応,更には,結晶状態での光反応性をX線構造解析と時間分解分光法を用いて研究を実施し,科学に貢献できる研究に邁進することが目的である。また,炭素の同族元素であるケイ素原子をラジカル中心に用いた新たな化学に挑戦し,未来の科学につながる理学研究を実施する. 結合のホモリシス過程に必ず介在する一重項1,3-ジラジカルを直接観測するためには,基底状態が一重項であるジラジカルの長寿命化と低温での発生が鍵になる.そこで,まず,一重項ジラジカルをクリーンに効率よく発生することができるアゾ化合物の合成を,平成29年11月26日から実施し,平成30年2月末に,低温ガスマトリクス中でジラジカルを発生できる単環のアゾ原料の合成を完了した.平成29年3月に,CsI,KBrを用いて,局在化一重項ジラジカルの直接観測のための低温ガスマトリクスを用いた予備的実験を開始した.単環アゾ化合物の低温マトリクスでの単離を確認し,光照射(>250nm,172nm)によって,アゾ化合物の光分解反応を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,低温ガスマトリクス中に,アゾ化合物の脱窒素反応により発生する一重項ジラジカルの構造と反応性に関する研究を進め,結合のホモリシス過程を深く理解することを目的としている。また,近年,重原子のトンネル現象により骨格転位反応が報告されており,一重項ジラジカルにおいても,そのようなトンネル効果が観測されるか興味深い。これらの研究を推進するためには,ラジカルを発生する原料となるアゾ化合物の合成が不可欠であり,そのアゾ化合物の蒸着挙動が本研究の成功の鍵となる。平成29年度は12月より研究を開始したが,すでに,アゾ化合物の合成と的陸作成に成功しており,また,光照射によってアゾ化合物の分解が観測されている。したがって,研究は順調に進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年12月からスタートした本研究は順調に進んでおり,今後,極低温下における振動解析によって,光反応で生成する中間体との構造決定と反応性について詳細を明らかにしていく。特に,光脱窒素時の立体化学に大変興味が有り,アゾ化合物への重水素標識を行い,溶液中,ガス中,低温マトリクス中での立体化学を精査し,反応のホモリシス過程に介在するとされてきた一重項ジラジカルの化学を明らかにする。
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