2018 Fiscal Year Annual Research Report
単離したセルロース生成好熱菌による廃グリセロールからのバクテリアセルロース生産
Project/Area Number |
17F17354
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中崎 清彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (70180263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VIKROMVARASIRI NUNTHAPHAN 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 好熱性細菌 / バクテリアセルロース / 細胞外ポリマー / グリセロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高温条件下(50~60℃)において廃グリセロールからバクテリアセルロースを生産することを目的とした。高温で作成したコンポスト試料を用いて、セルロースを生産する好熱性菌の単離を試みた。液体培地の表面にバイオフィルムを形成した菌株を単離し、これらのバクテリアが生産した細胞外多糖の組成分析を行ったところ、それらはバクテリアセルロースではなく、他の細胞外多糖であることがわかった。興味深いことに、そのうちの1種はおそらく高付加価値物質であるGalactoPolを分泌していると考えられた。当初の目的であるセルロース生成微生物については、酢醸造所の排水から新たに候補となる7株の好熱性バクテリアを単離しており、現在そのセルロース生産能を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は研究計画のタイムスケジュールからやや遅れている。研究の最初の目的はグリセロールを炭素源として高温条件下でセルロースを生産する微生物の単離であったが、細胞外多糖の組成分析の結果、単離微生物はバクテリアセルロースを分泌していないことが明らかとなった。そのため、新たな単離源(酢醸造所の排水)から好熱性バクテリアの単離を試み、現在までに新たに7株のバクテリアを単離している。一方で、バクテリアが分泌した細胞外多糖の組成分析を行ったところ、興味深いことに、そのうちの1種はおそらくGalactoPol(ガラクトース、マンノース、グルコース、ラムノースを含む)を分泌していると考えられた。GalactoPolは化粧品や医薬品に利用可能な高付加価値物質である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度に新たに単離した7株の好熱性バクテリアのグリセロールからのバクテリアセルロース生産能の評価、好熱性バクテリアの同定、最適培養条件の確立、生成バクテリアセルロースの物理的・機械的特性の評価をおこなう。好熱性細菌の同定は16S rRNA系統分析を用いる。続いて、グリセロールを培地中の主な炭素源として使用して単離菌によるバクテリアセルロース生産実験をおこなう。また、バクテリアセルロースの効率的な生産には、その生産が、増殖に連動か非連動かによらず、高濃度の菌体を生産することが有利と考えられるので、グリセロールと併せて培地に微量の炭素源や窒素源を添加して、これらの炭素源・窒素源の添加が、菌体の増殖とバクテリアセルロースの生産性に与える影響を検証する。さらに、基質の種類と濃度以外にも、温度、pH、酸素供給、攪拌、培養時間、微生物の接種量がバクテリアセルロースの生産量ならびに物理的・機械的特性に影響を与えると考えられるので、これらの培養条件を変化させることで培養特性を検討して培養条件を最適化し、バクテリアセルロースの生産量と機械的強度をさらに高めることを試みる。これらの実験と併せて、GalactoPolを含む細胞外多糖の分泌促進条件の検討をおこなう。異なる培地組成(グリセロール濃度等)ならびに培養条件(温度、pH)で単離バクテリアの培養をおこない、細胞外多糖の生成量が最大化する条件を明らかにする。加えて、16SrRNA系統解析による単離バクテリアの分類、ならびに、細胞外多糖の組成分析を進める。これらの一連の研究成果をまとめ、国際学術誌に投稿する。
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