2017 Fiscal Year Annual Research Report
様々な分光法や量子化学計算を駆使した環境中での放射性核種の移行素過程に関する研究
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17F17383
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YANG SHITONG 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線核種 |
Outline of Annual Research Achievements |
モリブデンは、放射性廃棄物に含まれる主要な元素(核種)の1つである。そこで、モリブデンの環境中での挙動を探るため、そのホスト相として重要な水酸化鉄およびマンガン酸化物に対するモリブデンの吸着構造とその特徴について調べた。その天然試料の例として、海底鉄マンガン酸化物を用いた。鉄マンガン酸化物は、水酸化鉄およびマンガン酸化物を主成分とする海底沈殿物であり、クラストや団塊などの形態で世界の海洋底に幅広く大量に存在している。また、沈降粒子中に存在する鉄マンガン酸化物との反応は、海水中の微量元素の挙動を支配する重要な化学過程である。これまでの研究から、マンガン酸化物が帯びる負電荷により、海水中で陽イオンとして溶存する元素が海底鉄マンガン酸化物へ多く濃集することが知られている(Koschinsky and Halbach, 1995 ; Hein et al., 2003)。また、海洋で陰イオンとして溶存する元素は、その共役酸の酸解離定数(pKa)が大きいほど海底鉄マンガン酸化物に対して多く濃集することが示唆されている(Takahashi et al., 2014)。しかし、元素の濃集を支配する化学的要因は多岐にわたるため、元素ごとの吸着機構の系統的な理解は十分ではないのが現状である。本研究では、特に陰イオンとして海洋に溶存する微量元素の鉄マンガン酸化物への濃集機構に新たな知見を加えるべく、それぞれ水酸化鉄、マンガン酸化物への選択的濃集が示唆されるヒ素(As)とモリブデン(Mo)の濃集機構から海底鉄マンガン酸化物中での水酸化鉄とマンガン酸化物の存在状態について研究を行った。その結果、陰イオンとして溶存するMoが負電荷を帯びるマンガン酸化物に選択的に濃集することが確認され、電荷だけでなく化学構造による濃集機構の重要性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モリブデンとヒ素の比較については、既に論文を執筆しており、近日中に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、環境放射化学的により重要な放射性核種であるウランについて、粘土鉱物中の鉄によるウランの酸化還元反応に着目した研究を行う予定である。
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