2017 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉中性子を用いた革新的元素分析技術の開発と環境試料への応用
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17F17384
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 勤 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (50233193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SOLIMAN MOHAMED 京都大学, 原子炉実験所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 放射化分析 / 大気浮遊塵 / 研究用原子炉 / 有害元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
京都大学複合原子力科学研究所の研究用原子炉(KUR)を用いた中性子放射化分析法(NAA)は、これまでに宇宙地球化学分野をはじめとした様々な分野における、微量元素分析に用いられてきたが、環境分析(特にPM2.5, PM10など)を目的とした大気中浮遊塵の分析においても、有効な手段として用いられている。また得にNAAによるPM2.5試料の分析は、日本が主導する原子力平和利用協力の枠組みであるアジア原子力協力フォーラム(FNCA)のNAAのプロジェクトの重要な課題の一つにもなっている。そこで本年度は、KURの運転休止期間中に滞っていた環境試料のNAAを行っている。当実験所では常時、環境をモニターするため、浮遊塵粒子(Suspended particulate matter, SPM)をろ紙に収集したものの放射能測定を行っており、それらをアーカイブとして保管している。本研究ではまず、これらのSPM試料のNAAによる分析を行った。一回の実験で約数十試料の分析が可能であり、すべての元素の分析値を得るために約4週間を要した。尚、上記で分析を行う白金族元素や希土類元素は地球化学的な観点から、興味深い元素である。希土類元素は、化学的性質は類似しているが、イオン半径が系統的に変化することから、また白金族元素は鉄との親和性が高いことから、SPM試料中のそれらの元素存在度に基づいて、SPMの由来に関する議論をする上で、どちらも重要な指標となっている。NAAのためのマシンタイムは、研究代表者が十分に確保している。また上記試料を溶液化した上で、ICP-MSのよる分析も試み、NAAの結果と比較している。現在、原子力規制委員会による試験研究用原子炉への親規制基準対応のための約3年間の運転休止があり、運転再開に向けてサンプリング、資料調整を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
京都大学の研究用原子炉(KUR)を用いた中性子放射化分析法(NAA)は、これまでに宇宙地球化学分野をはじめとした様々な分野における、微量元素分析に用いられてきたが、環境分析(特にPM2.5, PM10など)を目的とした大気中浮遊塵の分析においても、有効な手段として用いられる。2017年度までは原子力規制委員会による試験研究用原子炉への親規制基準対応のための(~3年間)の運転休止があった。2018年度の10月より運転再開ができた2019年2月に定期検査のために運転休止中となる。本研究所でアーカイブとして保管している環境をモニターするための浮遊塵粒子(Suspended particulate matter, SPM)をろ紙に収集したものの分析を試みたが多くの不純物があり、よい結果は得られなかった。また、この間、サンプリングされた大気中浮遊塵の分析を行い、有害金属である砒素等のプレレミナリな値を得た。サンプリングや資料調整は2017年度から始められた。であるが、得られたサンプルをNAAで十分に分析できていないのが現状であった。よって、進捗区分ではやや遅れがでているとする。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度までの約3年以上にわたり休止を余儀なくされた。さらに、東日本大震災の影響で規制基準の見直しがあり、非常に運転条件が厳しくなった。2018年度の10月より運転再開ができた2019年2月に定期検査のために運転休止中とな る。この間、サンプリングされた大気中浮遊塵の分析を行い、有害金属である砒素等のプレレミナリな値を得ている。サンプリングや資料調整は継続中であるが、しかし、得られたサンプルをNAAで十分に分析できていない。研究の幅を広げるべく、1018度より本研究所のある南大阪ばかりでなく、東京都八王子市の首都大学東京のグループや茨城県つくば市の産業総合研究所のグループとも連携し、日本の地方による違いや季節・昼夜等にも視点をもって解析を進める予定である。2019度8月にはKURの運転再開が見込まれるので精力的に実験を試みる予定であるが、2018年度中にプレレミナリな値を得たい。また、本期間中にICP-MSによる分析も行う予定である。これらの結果はアジア原子力フォーラムの中性子放射化分析班の発表にも役立てる予定である。
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Research Products
(1 results)