2017 Fiscal Year Annual Research Report
系統種間比較法による類人猿・人類後肢骨の進化モデル構築
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17F17394
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中務 真人 京都大学, 理学研究科, 教授 (00227828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PINA MARTA 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 中新世 / 化石霊長類 / 進化 / 運動適応 / アフリカ / ヨーロッパ |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、化石類人猿を含む霊長類の後肢骨格(大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨)の形状がもつ適応的意味を、比較解剖学的方法と工学的方法から分析し、その結果をもとに系統種間比較法を行って、現生ヒト上科の後肢骨がどのような進化経路を経て今日の状態に至ったかを復元しようとしている。2017年度はMarta Pinaの来日から6ヶ月という短期間であり、2018年度の研究に向けた準備活動と位置づけることができる。 Marta Pinaは、バルセロナ大学博士課程において、スペイン、カタロニアに位置するペネデス盆地(1200万から900万年前)から得られた化石類人猿の後肢骨格の形態分析を行ってきた。ヨーロッパにおいて、これよりも古い時代の化石類人猿資料は乏しい。また、同時期のアフリカ類人猿の四肢骨化石資料は実質的に皆無だが、ヨーロッパ類人猿の系統の根幹に位置すると考えられるケニア産化石類人猿、ナチョラピテクスの四肢骨化石の分析を新たに行い、類人猿の四肢骨の系統進化過程を分析する基礎情報とした。ナチョラピテクスは1500から1600万年前の化石類人猿であり、未発表四肢骨資料が大量に得られている。今年度、ケニア国立博物館を訪れ、これら化石資料の直接観察を行った。資料の種類、保存状況、タフォノミーによる変形の度合いを綿密に観察し、2018年度の本格的調査の予備観察とした。 また、現生の比較資料として類人猿の液浸資料を、京都大学霊長類研究所で観察した。工学的モデルについては、慶應大学理工学研究科の荻原直道教授と打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Marta Pina が来日してから、2017年度の活動期間は6ヶ月しかなく、研究成果を出すには短すぎる期間だが、2018年度の研究に向けた準備活動は着実に進んだ。特に、ケニア国立博物館を訪れ、ケニア産化石類人猿、ナチョラピテクスの四肢骨化石を直接観察したことには大きな意味がある。ナチョラピテクス資料は非常に数が多いが、そのほとんどが土圧のために変形している。数百に及ぶ化石資料を綿密に観察し、どの資料を研究に用いることができるかを記録した。2018年の夏には、ケニア国立博物館へ小型CTを一時輸出し、ナチョラピテクスならびに他の化石類人猿標本の内部構造を観察する予定だが、その計画案が作成できた。 比較資料として用いる現生類人猿のCTデータも、京都大学霊長類研究所の協力により順調に集まっている。 2018年11月開催の日本人類学会大会において、研究発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
6月にMarta Pinaがスペイン、カタロニアを訪れ、ミゲル・クルサフォント古生物学研究所で化石類人猿標本の研究、新しい化石産地の視察を行う。8月後半から約一月、ケニア国立博物館を訪れ、化石資料の計測を行う。計測にはレーザー式三次元デジタイザ、小型CTを用いる。 現生の資料を元にした類人猿後肢骨格の工学モデル作成を、慶應大学の荻原教授と共同で進める。 予備的な研究成果については、11月の日本人類学会大会で発表する。その後、さらに分析を進め、2019年4月に開催されるアメリカ形質人類学会で主たる研究内容の発表を行う予定である。この登録が9月中旬であるため、それまでに計画進行の目途をつける。
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