2017 Fiscal Year Annual Research Report
メロテルペノイド生合成マシナリーの機能と構造に関する研究
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17F17400
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
葛山 智久 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (30280952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUO QI 東京大学, 生物生産工学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2019-03-31
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Keywords | 生合成 / 放線菌 / メロテルペノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ベントシアニン生産菌Streptomyces sp. BK97からゲノムDNAを調製して、ゲノムシーケンスデータを得るとともに、BACライブラリーの構築を完了した。バイオインフォマティクスを駆使して、ベントシアニン生合成の候補遺伝子を見つけて、今回構築したBACライブラリーから目的のクローンのスクリーニングを開始した。加えて、ベントシアニン生合成遺伝子クラスターの近くには、別のメロテルペノイドであるデメチルナフテルピンの生合成に関与すると予想できる遺伝子クラスターを見つけることができた。この遺伝子クラスターには、ナフテルピンの生合成の鍵酵素であるABBAプレニル基転移酵素が含まれている一方、確かに、メチル化酵素を欠いていた。ナフテルピンの生合成についても未知の部分が多く、今回デメチルナフテルピンの生合成候補遺伝子が見つかったことで、メロテルペノイドの構造多様性を構築する環化機構を明らかにできる可能性が出てきた。 Streptomyces sp. BK97を培養し、ベントシアニンの生合成中間体を検出することを目的に、培養液を高分解能LC-MSで分析したところ、ベントシアニンのベンジル基の由来となりうる、C6-C2化合物であるPhenylacetic acid、Phenyl acetamide、2-Oxo-Phenyl acetamideと推定されるシグナルを得た。一方、C6-C1化合物であるBenzoic acid、Benzamideは検出できなかった。これらの結果から、ベントシアニンは、フェナジン骨格であるピオシアニンが生合成された後に、何らかの修飾によって活性化されたC6-C2化合物が基質となって付加することで、ベントシアニン骨格が生合成されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外国人特別研究員のLuo Qiが、2018年2月に配偶者の出産に立ち会うため、1ヶ月間、本国に帰国した。その間、予定していたベントシアニン生産菌のBACライブラリーの構築が遅れ、その影響で、ベントシアニン生合成遺伝子の同定に関する研究にやや遅れが出た。ただ、帰国後、すぐに研究に着手することで、現在では、BACライブラリーの構築も完成しており、目的クローンのスクリーニングも完了していることから今後の研究遂行に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、ベントシアニン生合成の候補遺伝子を見つけて、構築したBACライブラリーから目的のクローンをスクリーニングしているところである。今後は、目的クローンが取得できたところで、異種放線菌である、Streptomyces lividan、Streptomyces albus、Streptomyces avermitilisを宿主としてベントシアニンの異種生産を試みる。これにより、ベントシアニン生合成遺伝子クラスターを同定することができる。さらには、同定したベントシアニン生合成遺伝子の中でも特に、フェナジン骨格の窒素原子にプレニル基を付加するN-プレニル基転移酵素がもっとも特徴的であることから、その遺伝子を同定するとともに、試験管内の反応を精査することで反応機構やX線結晶構造解析を行うことで構造基盤の解明を試みる。加えて、ベントシアニン生合成遺伝子クラスターの近くには、別のメロテルペノイドであるデメチルナフテルピンの生合成に関与すると予想できる遺伝子クラスターが存在している。そこで、この遺伝子クラスターを精査することにより、デメチルナフテルピンの生合成経路についても明らかにする。これらの研究成果により、放線菌の生産するメロテルペノイドの生合成機構についての包括的な知見を得る。また、ベンジル基の活性化と付加反応を触媒する酵素を同定し、さらには反応機構、ひいては構造基盤についても解明を進める。
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