2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary and developmental basis of host-symbiont interactions in seed bugs
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17F17409
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
徳田 岳 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (90322750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KUECHLER STEFAN 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 昆虫 / 寄生・共生 / 菌細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナガカメムシ上科に属するカメムシ類は菌細胞という特殊な共生細胞に細胞内共生細菌を宿すことが知られており、主に6つの異なる共生細菌の分布様式が確認されている。ところが、宿主昆虫が多様な菌細胞の発生機構をそれぞれどのように獲得し、進化させてきたのかは不明である。そこで、近縁ながら菌細胞の発生経路が大きく異なる2つの種、ヒメナガカメムシおよびウスイロヒラタナガカメムシに着目し、菌細胞の細胞動態・遺伝子発現の比較解析を実施して両者の共通点と相違点を探ることにより、菌細胞の進化発生学的基盤の解明を目指している。
1)顕微鏡観察:卵内における共生微生物感染過程の細胞動態を詳細に明らかにするため、まずFISH観察用の標本作成方法の最適化を実施した。固定方法および対物レンズの変更を試みることで、従来の低倍率組織レベルではなく細胞レベルでの高解像度の観察が可能になった。本手法を用いてヒメナガカメムシで抗生物質処理によって共生細菌を除去した個体を観察したところ、共生細菌の有無に関わらず菌細胞原基は形成されることを確認した。一方、ウスイロヒラタナガカメムシにおいては、予定菌細胞原基に共生細菌が感染するわけではなく、共生細菌を含んだsymbiont ballが胚の中心部にそのまま沈んでいく過程が観察された。
2)トランスクリプトーム実験:ナガカメムシにおいてはこれまでにUbx遺伝子発現が菌細胞形成に関わることが知られているが、菌細胞形成の調節機構の詳細は不明であり、近縁種でも同様の機構が保存されている証拠はない。そこで、本研究では上述2種の菌細胞形成時における遺伝子発現をRNA-seqによって比較解析することを試みている。これまでに菌細胞の分離手法とRNA抽出条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は健康上の理由により、初期の実験の一部を次年度に繰り越して研究を実施した。そのため、菌細胞形成過程の観察は予定していた電子顕微鏡観察に代えて、蛍光顕微鏡による観察方法を改善することで対応した。また当初、トランスクリプトーム解析を実施するにあたって、レーザーマイクロダイセクションによる胚由来菌細胞組織の回収と技術習得を予定していたが、まずは手法と実験条件を再検討した。そのため、研究自体は目的に沿って進展しているが、当初の予定通りには進行していないため、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は繰越のため、1年目の研究課題と2年目の研究課題を同時進行で実施することとなったことから、初年度の結果に関わらず、当初の研究計画に沿って2年目の研究を同時並行で進めている。そのため、ここに示す推進方策は主に平成30年度に実施されている。まず、本研究課題1)における電子顕微鏡観察を効率よく実施できるよう、これまでの共焦点顕微鏡画像を詳しく解析し、今後観察すべき箇所を特定して集中的に観察する。また、本研究課題2)のRNA-seq用のサンプル調整を早急に実施し、実験条件を確定することで、早期に依頼解析を発注できるように努める。
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