2017 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系におけるペプチド分解酵素DPPIIIの生理学的・病理学的役割と分子機構
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17F17418
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PANG XIAOLING 滋賀医科大学, 医学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド分解酵素 / 心血管疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジペプチジルペプチダーゼIII(DPPP III)は、アミノ酸残基数3から10のポリペプチドのうち、特定配列を持つポリペプチドのN末端アミノ酸2残基を切断する酵素である。これまで、この酵素の生体内、特に、心血管系での作用・役割についてはほとんど研究されてこなかった。 本研究では、この点について明らかにしていくため、最新のCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、DPP IIIノックアウトマウスの作製に着手し、本年度はそのマウスの産出に成功した。DPP IIIノックアウトマウスは、メンデルの法則の通りの割合で成体となった。コントロールマウスと比較して、外見上見分けはつかなかった。主要な心血管臓器である心臓、腎臓、大動脈を摘出して、免疫組織染色でDPP IIIの発現を解析したところ、コントロールマウスではこれらの組織のほとんどの細胞でDPP IIIが発現していたが、ノックアウトマウスでは確かにDPP IIIの発現が消失していた。このことは、ウェスタンブロッティング法でも確認した。現在、上記の心血管系臓器における線維化の程度などについて、コントロールマウスとコンディショナルノックアウトマウス間で差がないか検討中である。また、小動物用血圧計を用いた血行動態(主に、血圧、脈拍の測定)、小動物用エコーを用いたライブイメージングでの心機能(主に、心収縮力や心筋壁厚変化)や血流動態(主に、大動脈での血流速、血流の乱れ)などについても解析しており、DPP IIIが心血管系で果たしている生理的役割を多角的に検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、DPP IIIのノックアウトマウスを産出できたことで、今後、このマウスを用いた実験を行っていくことが可能となった。実際、既にDPP IIIノックアウトマウスを活用し、心血管系組織でのDPP IIIの生理学的役割とその作用機序の解析に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように現在行っている血行動態、心機能、血流動態の解析を、コントロールマウスとDPP IIIノックアウトマウスを用いて進めていく。これらの解析で有意差が認められれば、次に、その機序について明らかにしていく。解析の結果、差が認められない場合は、高血圧負荷や虚血負荷などのストレスをかけることでマウスに病的状態を惹起させ、この状態で両マウス間での反応に差が生じないか病理学的な観点から調べていく。DPP IIIは血圧調節に関わるアンジオテンシンIIの代謝を調節していることから、特に、高血圧負荷時のDPP IIIノックアウトマウスの変化に十分注意して観察を行っていく。
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Research Products
(12 results)