2017 Fiscal Year Annual Research Report
Temperature-dependent increases in the toxicity of natural plant compounds
Project/Area Number |
17F17715
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
島田 卓哉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (10353723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WINDLEY HANNAH 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-07-26 – 2019-03-31
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Keywords | 植物二次代謝物質 / タンニン / 気温依存性 / アカネズミ / 解毒機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物二次代謝物質の毒性の気温依存性を解明することは,植食性哺乳類の餌選択の季節性や地域性を理解する上で重要な課題である.本研究では,日本産野ネズミと堅果類を対象として,タンニンの毒性の気温依存性を解明することを目的として,飼育下での実験を実施した.今年度は岩手県盛岡地域(東北支所構内およぼ岩手大学滝沢演習林)で捕獲されたアカネズミを用いて以下の一連の実験を行った. 1)解毒酵素活性の気温依存性の検証:アカネズミを3つの設定温度で飼育し,睡眠時間検定法によってタンニンの解毒酵素活性を測定した.具体的には,ヘキソバルビツール(タンニンと同じ代謝経路を持つ麻酔薬)を一定量被検個体に投与し,正向反応の消失から回復までの時間を解毒酵素活性の指標とした.その結果,著しい個体差は認められたものの,解毒酵素活性は20℃(アカネズミの熱的中性域)で最も高く,熱的中性域外の10℃や28℃では低くなることが判明した. 2)堅果中のタンニンの毒性の気温依存性の検証:アカネズミを2つの設定温度(10℃,20℃)で飼育し,コナラ堅果のみを供餌することによって,タンニンの毒性の気温依存性を検証した.コナラ堅果は岩手大学滝沢演習林で採集し,使用するまで2℃で保管し,虫害などのない健全な子葉部のみを供餌した.その結果,体重変化には設定温度間で差が認められなかったが,摂食量および消化率は10℃飼育個体の方が高いことが判明した.また,解毒酵素活性は10℃飼育個体の方が高く,全個体を通じて解毒酵素活性が高い個体ほど摂食量および消化率は良い値を示す傾向があった.この結果から,10℃飼育個体は20℃飼育個体よりも高いタンニン耐性を発現しており,それには解毒酵素活性の違いが関与していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は課題初年度であり環境整備に時間がかかったが、計画していた飼育実験を実施することができた。結果は解析途中であるが、目標を十分に達成できる成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度の成果によって,低温下でアカネズミのタンニン耐性が亢進することが示された.一方,タンニン摂取は代謝増加による産熱をともなうため,寒冷条件下ではタンニン摂取は動物の体温調節という点においてはプラスの効果を持つのではないかと考えられる.低温下でのタンニン耐性の亢進と産熱によるプラス効果とを総合的に考慮すると,アカネズミは冬期にタンニンを含む食物を積極的に摂食することによって,寒冷環境に適応している可能性がある.次年度は,タンニン摂取が動物の体温調節機能に与える影響を解明するために,日内休眠の状態(頻度,休眠時体温など)へのタンニン摂取の影響を検証する.
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Research Products
(1 results)