2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Lignin-Recognizing Magnetic Nanoparticle Catalysts for Valorization of Wood Biomass
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17F17759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 正治 京都大学, 化学研究所, 教授 (00282723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PINCELLA FRANCESCA 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-10-13 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒 / ナノ粒子 / リグニン / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,リグニンの直接的な酸化分解により有用な芳香族化合物を得ることを目的として,リグニン認識特性を賦与した磁性金属ナノ粒子触媒の開発を行っている。研究初年度であるH29年度は磁性金属ナノ粒子の合成を行い,ベンジルアルコールを用いた触媒反応により,マイクロ波照射下において効率的な酸化反応が進行する条件の探索を行った。 具体的には,高い磁場応答性が期待されるスピネル型の結晶系を有する磁性金属ナノ粒子として,マグネタイトに着目し,ステアリン酸で表面保護されたマグネタイトナノ粒子の合成を行った。合成した磁性ナノ粒子のTEM観察を行った結果,平均粒径が15 nmで,粒径分布の狭いナノ粒子が得られていることが確認された。また,XRD測定により,目的とするスピネル型のマグネタイトナノ粒子が得られていることが確認された。合成した磁性金属ナノ粒子を用いて,リグニンのモデル基質であるベンジルアルコールの酸化反応の検討を行った結果,期待されたように,マイクロ波照射下において酸化触媒として作用し,酸化触媒反応が速やかに進行することを見出した。 TEM,XRD,およびXAFSを用いて触媒反応前後のナノ粒子の構造変化を調べた結果,マイクロ波を用いた酸化反応によりナノ粒子の粒径,結晶系,組成に変化は無く,合成した磁性金属ナノ粒子が酸化触媒として適していることが明らかとなった。 本研究内容は日本化学会第98春季年会において成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
磁性金属ナノ粒子の合成とマイクロ波照射下におけるベンジルアルコールの酸化反応については予定通りに研究が進展しているが,IRを用いた表面保護分子の構造解析から,触媒反応後に磁性金属ナノ粒子表面の保護分子が脱離していることが確認されている。この表面保護分子の脱離が触媒活性失活の原因であり,いまだ触媒回転数は低くとどまっている。これは次年度の研究課題とも直結する問題点であるため,現在解決法の探索を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により,磁性金属ナノ粒子がマイクロ波照射下においてベンジルアルコールの酸化反応を速やかに進行させる触媒として作用することが明らかとなった。しかし,問題点として,触媒反応後に表面保護分子が脱離してしまうことが確認された。表面保護分子の脱離は触媒活性の低下につながるため,酸化反応条件において安定に表面に結合を保持できるアンカー分子の探索が必須課題である。これは次年度の課題として予定しているリグニン認識ペプチドを導入するためのアンカー分子の探索と同様の目的となる。すでにいくつかのアンカー分子の検討を行っており,酸化反応前後の磁性金属ナノ粒子の構造解析,およびアンカー分子が脱離した生成物の同定,から酸化反応過程における磁性金属ナノ粒子表面の反応機構に対する知見が得られている。得られた知見を基に,種々のアンカー分子を導入した磁性金属ナノ粒子を合成し,ベンジルアルコールの触媒的酸化反応を通じて,酸化反応条件において安定に磁性金属ナノ粒子表面に対する結合状態を維持可能なアンカー分子を見出す。 アンカー分子を見出した後,アンカー分子を介してリグニン認識ペプチドを導入した磁性金属ナノ粒子を合成する。単純なアルキル鎖末端とリグニン認識ペプチド末端を有する表面配位子を混合して磁性金属ナノ粒子の合成反応を行うことで,リグニン認識ペプチドの導入比率を変えた磁性金属ナノ粒子を合成する。合成した磁性金属ナノ粒子は各種物性評価を行うとともに,紫外可視吸収・消光スペクトルを用いてリグニンとの相互作用解析を行うことで,リグニン認識ペプチド導入比率と相互作用との関係性を明らかにする。最終的に,リグニン認識ペプチド修飾磁性金属ナノ粒子を用いてリグニンのマイクロ波加熱触媒的酸化反応の開発に着手する。
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Research Products
(1 results)