2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Lignin-Recognizing Magnetic Nanoparticle Catalysts for Valorization of Wood Biomass
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17F17759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 正治 京都大学, 化学研究所, 教授 (00282723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PINCELLA FRANCESCA 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-10-13 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒 / ナノ粒子 / リグニン / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,リグニンの直接的な酸化分解により有用な芳香族化合物を得ることを目的として,リグニン認識特性を賦与した磁性金属ナノ粒子触媒の開発を行っている。前年度の研究により,ステアリン酸保護されたマグネタイトナノ粒子がマイクロ波照射条件において触媒として作用し,ベンジルアルコール類の酸化が効率よく進行することを見出している。一方で,酸化反応過程においてステアリン酸が脱離してしまい,表面保護分子を保持できないことが課題であった。そこで,本年度は触媒の回収・再利用の可能な触媒反応条件の探索と,同触媒反応条件を用いたリグニンの変換反応の開発を目的として研究を行った。 具体的には,触媒の回収・再利用を目的とし,溶媒,および反応条件の検討を行った結果,本触媒は通常加熱に比べてマイクロ波加熱条件において安定であり,マイクロ波照射酸化反応では最低5回の繰り返し再利用が可能であることを明らかにした。この触媒の高い安定性はマイクロ波応答性の高いスピネル型のマグネタイトナノ粒子の物性に起因するものと考えている。 また,同触媒反応条件を用いてリグニンの酸化変換を検討した結果,高選択的にヒドロキシフェニルプロパンジオン類縁体が得られることを見出した。さらに,同反応が単離リグニンではなく,セルロース,ヘミセルロース,およびリグニンから構成される木粉に対しても有効に作用し,対応する酸化変換生成物が得られることを明らかにした。本研究成果は日本化学会第99春季年会において発表を行い,優秀講演賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定とは異なり,磁性金属ナノ粒子を用いたマイクロ波照射下におけるベンジルアルコール類の酸化反応において,表面保護分子の脱離を伴って触媒活性種が生成することが明らかとなった。一方で,表面保護分子を用いることで粒径の制御された高活性な磁性金属ナノ粒子の合成を達成しており,リグニンの酸化変換が効率よく進行することを明らかにした。従って,リグニン認識能を賦与することは現在の磁性金属ナノ粒子では困難であるものの,研究目的であるリグニンの酸化変換反応に対して本触媒は効率的な触媒として作用し,木質バイオマスから有用な有機化合物を直接的に得る手法の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は3か月のみの研究機関であるため,研究の総括に注力するとともに,開発した触媒反応により木質バイオマスから得られる芳香族化合物の有用化合物への適用可能性を探索する。 これまでに,磁性金属ナノ粒子のマイクロ波加熱によるベンジルアルコール類の酸化反応において,IR,XRD,TEMなどの分析結果から,表面保護分子が容易に脱離するものの,触媒である磁性金属ナノ粒子コアは安定に回収され,再利用可能であることを明らかにしてきた。また,通常加熱に対してマイクロ波加熱を利用することで,触媒の高耐久性が実現されていることを明らかにしている。そこで,今年度は本触媒の基質適用範囲を明らかにし,研究の総括を行う。 磁性金属ナノ粒子を用いるリグニン変換反応では,リグニンに最も多く含まれる繰り返し構造単位であるβ-O-4連結部位の酸化反応により,高選択的にヒドロキシフェニルプロパンジオン類が得られることを見出している。また,すでに本反応により得られるヒドロキシフェニルプロパンジオン類をアンモニウム塩存在下でアルデヒドを作用させることで,単段階で発光特性に優れたイミダゾール化合物に変換できることも明らかにしている。そこで,今年度は木粉から直接イミダゾール化合物を合成する手法について検討を行う。種々のアルデヒドを検討し,適用可能な置換基と得られる化合物の光物性を明らかにし,本手法の持続的社会構築における有用性を示す。
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Remarks |
日本化学会第99春季年会優秀講演賞 "Microwave-assisted facile conversion of lignin to fluorescent imidazole compounds"
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Microwave-assisted facile conversion of lignin to fluorescent imidazole compounds2019
Author(s)
PINCELLA, Francesca; LU, Siming; MATSUDA, Hiroshi; FAN, Lulu; MATSUMORI, Tomoko; KATSUYAMA, Isamu; ISOZAKI, Katsuhiro; FUKUDA, Kenji; WATANABE, Takashi; NAKAMURA, Masaharu
Organizer
日本化学会第99春季年会
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