2017 Fiscal Year Annual Research Report
溶鉄-溶融スラグ間の界面張力に及ぼす化学反応の影響に関する機構解明
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17F17766
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 敏宏 大阪大学, 工学研究科, 教授 (10179773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NI PEIYUAN 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2019-03-31
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Keywords | 界面張力 / 界面吸着元素 / 拡散 / 吸着現象 / 脱離現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力は、両者の間で化学反応が生じる際には、一時的に低下することが古くから知られている。申請者らは、この現象が、溶融スラグから溶鋼に向かって、両者が接触後、SiO2が分解するか、あるいは溶鋼中のAlによってSiO2が還元されて、SiとOになり、これらが溶鋼と溶融スラグの界面を通過して移動する際、Siはそのまま溶鋼中に拡散していくが、Oは界面吸着元素であるために、界面に吸着して一時的に留まり、やがて、脱離して溶鋼中に拡散するか、あるいは、溶鋼中のAlと反応してAl2O3となり、溶融スラグ中に拡散して、界面に吸着していた酸素もその濃度が徐々に低下すると考えている、界面に吸着した酸素量が多くなるほど、界面張力は低下するので、溶鋼と溶融スラグが接触した直後は、界面に酸素が吸着し、徐々にその吸着量も増えて、過剰に吸着し、界面張力が低下して、その後、脱離し、界面の酸素濃度が減少し、界面張力が増加し始めると考えた。この機構に基づいて、実験室で得られた実験結果や過去に報告されている他の研究者らの実験結果も説明できることが分かった。そこで、この現象モデルを定式化し、実験で得られた界面張力の時間変化の傾向を再現できる物理化学モデルの導出を行った。界面におけるOやSiの移動度、バルク中の拡散速度、界面における吸着度を表すパラメータを導入した結果、実験値の傾向を再現できる計算結果を得ることができた。得られた結果を既に投稿論文にまとめ、近日中に学会誌に投稿予定である。 現時点で、溶鋼中のAlの影響まで考慮した計算結果も得られている。さらに多成分系溶融鉄合金や多成分系溶融スラグを対象としたモデルへの展開・拡張を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力が両者の化学反応によって一時的に低下する現象は古くから知られているが、未だにその詳細な機構は明らかではない。申請者らはその機構を酸素の界面における過剰吸着現象であると考えて、実験室で得られた実験結果や過去に報告されている他の研究者の実験結果を説明できることを示した。しかしながら、高温における溶鋼と溶融スラグの界面は直視できないため、物理化学モデルを定式化し、実験結果の傾向を再現できるかどうかを示す必要がある。本研究では、1年間にわたってこのモデルの導出と計算を行う当初計画であったが、ほぼ半年で当初予定はこなしており、論文を投稿できるまでに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力が両者の化学反応によって一時的に低下する現象は古くから知られているが、未だにその詳細な機構は明らかではない。申請者らはその機構を酸素の界面における過剰吸着現象であると考えて、実験室で得られた実験結果や過去に報告されている他の研究者の実験結果を説明できることを示し、さらにた物理化学モデルを定式化して、SiO2が分解して、SiとOに分離し、その際野酸素の過剰吸着による界面張力の一時的低下についての実験結果の傾向を再現できることを明らかにした。今後は溶鋼中のAlによるSiO2の還元・分解による界面張力の一時的低下に対しても、上記のモデルを適用して計算し、実験値の傾向を再現できることを示す計画である。さらに、溶鋼・溶融スラグを多成分系に拡張し、より実際の溶鋼・溶融スラグの成分系に近い状態に対しても上記で得られた物理化学モデルが適用できることを示す計画である。
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