2018 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌機能を付与したシリカハイブリッドナノマテリアルの開発
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17F17813
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
REARDON PHILIP 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | 生体材料 / ハイブリッド材料 / 繊維構造体 / 抗菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、抗菌性イオンを導入した有機無機ハイブリッド粒子および繊維の開発を目指す。我々の研究室ではすでに、生分解性ポリマーであるポリγグルタミン酸と、シランカップリング剤の一種であるGPTMSからなるハイブリッド繊維構造体の作製に成功し報告している。この材料は、水を溶媒として用いて合成が 可能であることから、生体材料として高い安全性を確保すると共に、タンパク質を変性させずに容易に担持することが可能であることも見出している。本材料に新たに抗菌性を付与することで、インプラント材料全般にて課題とされる細菌感染を防止する機能を実現する。さらに繊維構造体だけでなく、ナノ粒子の成形にも挑戦することで応用拡大を狙う。 抗菌に効果的と報告のある亜鉛や銅イオンを本ハイブリッド構造内に導入することで、材料の分解と共に各イオンが溶出し、抗菌機能が発現するシステムを目指す。一方でこれらイオンは、適切な量が供給されることで細胞の活性化を促すことも報告されていることから、イオンの供給システムについて重点的に検討する。ハイブリッド材料の組成や化学構造はもちろん、サイズや形状についてもデザインすることで、目的とする材料の実現を目指す。得られた材料については、大腸菌等を用いた抗菌性試験を実施することで材料だけでなく生物学的見地からも幅広い評価を行う。 本年度は、既報のポリγグルタミン酸・GPTMSハイブリッド材料をベースに、亜鉛または銅イオンを置換させた材料を合成し、組成と材料の物理化学特性の相関について検討した。また、液相プロセスを用いたナノ粒子の合成について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度までに、抗菌イオンである亜鉛または銅イオンを導入したタイプのハイブリッド繊維構造体の作製方法の確立、及びハイブリッド組成と各イオンの徐放挙動の相関について検討した。 具体的には、本研究プロジェクトの基礎として既に開発してあった、カルシウム塩型のポリγグルタミン酸とシランカップリング剤の一つであるGPTMSからなるハイブリッドをベース組成としつつ、カルシウムの一部を亜鉛または銅に置換させたタイプのハイブリッド繊維構造体を作製した。置換率を変化させるとともに、材料の分解速度が変化し、同時に抗菌イオンの溶出速度・量も変化することがわかった。この原因として、亜鉛や銅イオンへの変化に伴う繊維内部の空隙サイズの変化などが推測された。 一方で、まずは銅イオンを用いたハイブリッドナノ粒子の合成についても取り組んだ。液相プロセスを用いてナトリウム塩型ポリγグルタミン酸のナトリウムの一部を銅イオンに置換させることで、ポリマーの凝集を促し、これによりナノ・サブミクロン粒子の合成が可能と考えた。しかし本年度中においては、残念ながら粒子の形成を明確に確認することはできず、よって合成方法の確立にはさらなる実験が必要な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、亜鉛または銅イオンを導入したタイプのハイブリッド繊維構造体の作製方法を確立させ、各抗菌イオンが材料から溶出することを確認した。一方で、抗菌機能の発現には材料からの抗菌イオンの徐放量及び徐放期間などが重要となる。よって本年度は、テーラーメイド的な抗菌イオン徐放能の実現を目指す。これが実現した後、大腸菌等を用いた抗菌能の評価を進めることで、材料設計と抗菌能発現の関連性について検討を進める。上述のような検討を進めることで、イオン種を含めた組成設計の違いによるハイブリッド材の化学構造への影響、およびこれに伴い発生する最終生成物の物性への影響など、本ハイブリッド材における体系的な科学的知見の取得も目指す。 一方で、ハイブリッドナノ粒子については上述した通り(「現在までの進捗状況」参照)、まだ合成方法・条件の確立ができていない状況であり、残念ながら当初の予定よりも遅れている。しかし、液相プロセスを用いた粒子合成について検討を進めており、知見は徐々に得られている。本合成方法における条件の最適化や、さらに他の合成方法まで検討を進めることで、理想とする材料の合成を達成したいと考えている。 当初の予定では、抗菌能評価に加え細胞親和性評価も実施する予定であった。現在の進捗状況を考えると、本プロジェクト期間内にて細胞親和性評価まで実施できる可能性は残念ながら低い。しかし、抗菌イオンを任意の速度や量で徐放できる材料自体は新しく、よって材料の物理化学特性をしっかり抑えることに焦点を絞り、最終的にはオリジナル論文にまとめてゆきたい。
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