2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17F17905
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60176865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WEI RONG-JIA 筑波大学, 数理物質系, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 電場誘起物性変換 / 磁性 / 誘電性 / 電荷移動共役スピン転移 / スピンクロスオーバー / キラリティー / スイッチング分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多重応答性相転移を示す化合物の物性研究として、これまでにシアン化物イオン架橋混合原子価Fe-Co錯体における電子移動に伴うスピン転移(Electron-Transfer-Induced Spin Transition = ETCST)が見出され、光誘起単分子磁石や光・熱による磁性・電気伝導性変換を示す物質が開発されてきた。しかしながら、熱によるスイッチングでは低応答速度、光スイッチでは低変換効率が問題であり、分子スイッチング素子の応用に障害となっていた。我々はこれまでに光学活性な配位子を導入したシアン化物イオン架橋混合原子価鉄-コバルトかご状錯体を合成し、ケージ内水分子移動による誘電応答と熱誘起分子内電子移動が共存する系を創出した。これは電場誘起物性変換を示す機能性錯体分子の創出につながる成果である。この研究を踏まえて、本研究では、分子のキラリティーおよびプロトンに着目した分子設計によって、様々な外場に応答しうる多重機能性分子性化合物の創製を目指して研究を行った。キラル構造をもつ2次元および3次元混合原子価金属錯体では、結晶の電気双極子により強誘電体となる可能性があり、電場誘起相転移を示す化合物が開発できると考えられる。これまで電場誘起相転移をしめす分子システムの研究例は皆無と言ってよく、これが実現すれば従来まで光と温度に頼っていた状態変換を電場により高効率・高速で状態変換できる全く新しい物質系を実現できる。そこで、本研究では電場誘起物性変換を目指した分子設計として、キラルな補助配位子を有し、脱プロトン可能な部位をもつ錯体の合成と集積化、ETCSTやスピンクロスオーバーに基づく双安定性の発現を目標として研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場誘起物性変換が可能な錯体分子を開発するためには、まず非対称な分子配列を誘起しやすいキラルな化合物で双安定性を発現する必要がある。そこで、有機配位子のキラリティーに着目して、キラルな2座、3座、4座配位子を新規合成し、この配位子をもつスピンクロスオーバー錯体の合成、および補助配位子としてもちいて集積化した電荷移動共役スピン転移錯体の開発を進めた。ピリジンおよび2級アミン部位を配位座として有するキラルな4座配位子をもちい、対イオンおよび溶媒分子の異なる4種類の鉄(II)単核錯体を得、構造・磁気的性質について調べた。磁化率測定の結果、100~300Kの温度域で急峻なスピンクロスオーバーが観測され、低温相および高温相の単結晶構造解析から鉄イオンの電子状態を明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、反転中心を持たない空間群に属する結晶構造をもつ双安定性錯体の合成に成功しているため、電場誘起物性変換を達成するためには電場に応答する部位を導入することが必要である。そこで、配位部位としてピリジン環ではなく分子の周辺方向に水素結合を形成可能なピラゾール、イミダゾール、およびピラジンなどの置換基を持つ新規キラル配位子を合成し、類似錯体の合成とプロトンドナー分子との複合化の研究を進める。配位子、錯体およびプロトンドナーのpKaを考慮し、分子間でプロトンの授受および分極変化が起こるような分子を試行錯誤によって開発する予定である。
|
Research Products
(4 results)