2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17GS0205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 一実 The University of Tokyo, 大学院・工系研究科, 教授 (30376511)
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Keywords | フォトニクス / シリコン / CMOS / 新原理素子 / ナノ集積 |
Research Abstract |
本研究は電子・光融合CMOSを実現する新アプローチとして「光素子の多様性低減」を提案し、光素子の機能統合化素子に関するコンセプト提案と実現をめざしな。これまでに課題実現に必要なマイルストーンを全て達成し、提案した光源、変調器およびフィルターの機能統合化について光共振器を基本構造とする新しいGe素子を作製し、原理実証に成功した。さらに、本研究の開始時には提案もできなかったマイルストーンである、Si上のGe成長技術において成長後の高温熱処理なしに理想に近いダイオード特性を得ることに成功した。これはシリコンフォトニクスのプロセスをCMOS技術に互換性を持たせる上でプレークスルーとなるものである。以下に概略を述べる。 1.機能統合化素子の提案と実証電気集積回路がトランジスターとインターコネクト(金属配線)からなる単純化された系であるのに比して、光素子を集積化するためには発光、変調、分波、および光検出の機能とインターコネクト(導波路)の集積化が、これまでの研究の主流である「光通信のチップ上搭載」路線では常道である。本研究では、この内、発光、変調、分波の三機能を統合する素子を提案し、光素子の種類を低減することを目指した。具体的には、Siと同じIV族元素であるGeによるリング共振器を用いたパーセル効果による発光促進、および僅かなSiを含むSiGe混晶によるフランツ・ケルディッシュ効果を用いた屈折率の電気光学変調、およびフィルターの原理実証を行った。これにより五種類必要であった素子種を三種類に低減することができ、電気集積回路の二種類に近い体系にスリム化できることを示した。 以上により、本研究は「シリコンCMOSフォトニクス」の本来目指すべき、将来、電子・光回路の大規模集積化時に世界が直面する最大の問題となる光素子の多様性を低減する光機能の統合化に関し、その素子原理の提案から素子動作の実証に初めて成功した。 2.SiGe高品質エビ技術の開発 産学連携には大型のSi基板にGeエピ結晶を選択成長し、CMOSラインに供給できる装置が必要であり、超高真空気相成長(UHV-CVD)装置を導入した。Si上のGeを820℃での高温熱処理により貫通転位のない試料を製作できることを明らかにした。しかし、高温熱処理はCMOSプロセスでは導入が困難であった。本研究では成長後に高温熱処理を不要とする成長技術を開発することに成功した。この知見の持つ産業界に対するインパクトはきわめて大きい。 以上の成果は最近我が国が開始した、シリコンフォトニクス関連の研究開発に関する国家プロジェクトにおいて進める電子・光集積回路の製作実証にたいしても大きな貢献となることと予想される。
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