2005 Fiscal Year Annual Research Report
THz波高分解吸収スペクトラム測定による分子・格子の固有振動と分子構造の同定
Project/Area Number |
17GS0209
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
富永 圭介 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (30202203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 哲朗 財団法人半導体研究振興会, 半導体研究所, 主任研究員 (20321630)
大西 洋 神戸大学, 理学部, 教授 (20213803)
小野 晋吾 神戸大学, 分子科学研究所・分子制御レーザー開発研究センター, 助手 (40370126)
神取 秀樹 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (70202033)
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Keywords | テラヘルツ / 量子光工学 / 化学物理 / 光源技術 / 有機化合物 / 生体関連分子 / 低振動スペクトル / 界面・表面 |
Research Abstract |
本年度はテラヘルツ波分光装置の開発・改良と既存の装置を用いて種々の有機分子のテラヘルツ波領域におけるスペクトル測定とその解釈を行った。 装置開発)超高分解能テラヘルツ分光装置の開発に着手した。励起光源としてオプティカル・パラメトリック・オッシレ一タ・レーザを導入し、GaP結晶のフォノン振動を用いたテラヘルツ波発生装置を試作した。明瞭な微細構造を観測するために、測定試料は数Kの極低温まで連続的に可変できるクライオ冷凍機で冷却することができ、高S/N比の測定を実現するためにレーザ出力の揺らぎを相殺するダブルビーム法を採用した。現状ではテラヘルツ波の発振線幅は1.5GHz以下が得られており、また、GaP結晶の改良により従来の2倍以上の出力強度が確認された。今後の更なる高分解能化のための励起光源レーザの検討を行い、半導体レーザによる光注入の光学系設計を行った。また、フェムト秒レーザーを用いたテラヘルツ波の発生装置の作成に着手した。 データベース作成)1.分子間水素結合系:種々のナフトール異性体について6THzまでの周波数帯で新たな吸収ピークを検出した。2.5-5.5THz付近に存在するものはナフタレンリングに起因するものであり、それ以外のものは、分子内振動モードによるものであると推測した。また、1,4ナフトールに関して、ab initio計算によるシミュレーションを行い、実験データと比較した結果、2THz以上の領域で比較的よい一致が見られた。2.大振幅振動系:アントラセンやナフタレンなどにメチル基やフェニル基を導入し、導入位置によるテラヘルツスペクトルの変化を分子軌道計算もあわせて検討した。3.生体分子系:カロテンやレチナールなどの生体関連分子のテラヘルツスペクトルの測定を行った。特に、機能的に重要かつ熱的に不安定な11シスレチナールの基底状態における低振動スペクトルの測定を準備した。4.溶液系:無極性溶媒中における極性分子の配向緩和や溶質-溶媒相互作用をテラヘルツスペクトルより調べた。5.界面・表面系:時間幅17fsの波長可変な光パルスを用いて二酸化チタン・大気界面と色素水溶液・ヘキサデカン界面のTHz振動を計測した。前者は、電子状態遷移に一光子共鳴させなくとも四次ラマン効果にもとづく振動スペクトルを得られることを示しており、測定対象物質の範囲を大きく広げる成果である。後者は、世界で初めて、液体中に埋没した界面のTHz振動スペクトルを計測したものである。
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Research Products
(4 results)