2017 Fiscal Year Annual Research Report
高等学校生徒に対する「和紙づくり」を題材とした伝統文化学習の実践とその学習効果
Project/Area Number |
17H00054
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Research Institution | 奈良県立吉野高等学校 |
Principal Investigator |
杉本 恵司 奈良県立吉野高等学校, 教員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | 体験学習 / 手漉き和紙 / 林産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
奈良県吉野町は、1940年代から70年代に林業・林産業で隆盛を馳せた地域であるが、安価な外国材の輸入、林業就業者の高齢化等の理由による林業の衰退に伴い、人口は減少し活性化が望まれる状況にある。一方、県立Y高等学校は吉野町にあり、森林科学科を有する県内唯一の高校として存在してきたが、地域の衰退と連動し、近年定員に遠く及ばない状態が続いている。そこで、森林科学科の生徒に、地元地域の特産物である「手漉き和紙」を題材に伝統文化学習を実践し、アンケート調査及び生徒が描いた吉野地域に関する概念地図を分析し、吉野地域の伝統や文化に対する知識量と知識の広がりや深さを調査することで、伝統文化学習の指導を受けた生徒がもつ吉野地域に対する意識の変化について、体験学習理論に基づいて検討を加えた。さらに、高校生の意識を高めることで吉野町の活性化に影響を及ぼすことを期待した。その結果、生徒の和紙に関する知識量は、授業後に有意に増加した。また、授業後に「割り箸」等の吉野町の林産物及び林産物加工品の歴史と現状を意識する生徒が有意に増加した。これは、生徒の多くが自ら和紙を作製したことと、和紙に関連する学習で、吉野町をより身近に意識したためと考えられた。また、「事前学習→体験→分析→学習の深化」の行程は、生徒の学習とその関連意識の知識化に効果的であったと考えられた。さらに、生徒の中には地元地域行政や地域の小・中学生と協働して吉野町の活性化を図っていこうとする意欲や姿勢が生まれた生徒も現れ、吉野川の水質環境調査を地元の小学生と協働したり、吉野川左岸の景観保全のため、種々の草花を地元小学生と協働で植え付ける等の新しい取組が生まれ、地元活性化への下準備が整いつつある結果が創出された。
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