2017 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンキナーゼ阻害薬による下痢マネジメントの最適化に関する研究
Project/Area Number |
17H00559
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
金子 裕美 千葉大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | アファチニブ / 下痢 / ロペラミド |
Outline of Annual Research Achievements |
第二世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬アファチニブのgrade3以上の下痢発現率は22.2%と高率であり、副作用マネジメントを適切に行い、治療を継続することが重要である。アファチニブによる下痢出現時には、止瀉薬のロペラミドを内服することが一般的な対処法であるが、下痢が出現する前からの予防的な投与は、推奨すべき十分なデータがない。そこで、本研究では、止瀉薬の予防的な投与が下痢の出現および重篤化回避に有効であるかを明らかにするために、2014年5月15日~2017年5月1日にアファチニブを内服していた患者41名を対象とし、止瀉薬予防投与の有無、初回下痢発現までの日数、CTCAE ver4.0に基づいた下痢のgradeを調査した。また、年齢、性別、体表面積、病期、投与量、前治療歴、便秘誘発薬剤併用状況を調査した。 予防的な止瀉薬投与を行った患者は15名(37%) で、13名はロペラミド、2名はタンニン酸アルブミンを内服していた。予防投与を行わなかった患者は26名(63%) であり、背景因子に差はなかった。grade2以上の下痢は、予防投与患者15人のうち6人(40.0%), 非予防投与患者26人のうち11人(42.3%) に生じ、両群で有意差はなかった(P=0.57 ; Fisher's exact test)。下痢発現までの期間中央値は、予防投与患者で6日(2~10日)、非予防投与患者で8日(2~27日) であった。したがって、今回の検討では、アファチニブの下痢出現に対し止瀉薬予防投与による軽減効果は認められなかった。また、ロペラミドを予防内服した13名のうち、50%に1~6日目に便秘が生じ、ロペラミドを減量していた。以上のことから、下痢は約1週間後に生じるが、ロペラミドの薬効は速やかに発現するため便秘を来たし、下痢が出現する時期まで十分量を内服継続することが困難であると推測された。 本検討より、予防的な止瀉薬投与は必ずしも行う必要はなく個人のリスクに応じて行うべきであると考えられた。現在は、以上の検討結果を院内で周知し、副作用軽減対策を講じている。
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Research Products
(1 results)