2017 Fiscal Year Annual Research Report
ビッグデータを利用した大腸癌術後化学療法開始時のB型肝炎対策の実態調査
Project/Area Number |
17H00576
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
室 高広 国立大学法人長崎大学, 病院, 技術職員
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Project Period (FY) |
2017
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Keywords | B型肝炎ウイルス / スクリーニング検査 / レセプトデータベース |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 B型肝炎ウイルスキャリアや既往感染患者に対する免疫抑制治療を行った際のウイルス再活性化による致死的重症肝炎の発症が報告されている。このため、免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(ガイドライン)では、がん化学療法施行予定の全症例に対して、B型肝炎ウイルススクリーニング検査(検査)を実施し、その結果に基づいた抗ウイルス剤の予防投与が推奨されている。本邦での検査と投与実施の実態は把握されていないためこれを調査することとした。 【方法】 全国13大学病院によるレセプトデータベースを用い、初回大腸癌術後化学療法開始時の検査と抗ウイルス剤投与を調査した。2008年1月1日から2016年9月30日までのデータから、初回大腸癌手術患者の内、ガイドラインで推奨されている術後9週以内に初回がん化学療法を実施した患者を解析対象とし、入院後がん化学療法開始までの間の検査(HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、HB-DNA定量)実施の有無と、抗ウイルス剤投与の有無を調査した。 【結果】 1976例の対象患者の内、16例(0.8%)に抗ウイルス剤が投与されていた。一方、1317例(66.6%)が化学療法開始前に検査を全く行っておらず、その内5例(0.4%)が化学療法実施後に抗ウイルス剤が投与されていた。何らかの検査を実施した症例659例の内11例(1.7%)に抗ウイルス剤が投与され、5例は化学療法実施前、6例が実施後に投与されていた。また、ガイドラインのフローと異なる実施も見られた。 【考察】 大腸癌術後化学療法での検査実施率は低く、検査未実施の抗ウイルス剤投与も見られた。適正な予防投与の実施のため、ガイドラインの十分な周知が必要である。今回の調査では抗ウイルス剤投与が予防か治療か区別することはできない。今後、予防投与の実態と有益性を調査する必要がある。
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