2018 Fiscal Year Annual Research Report
Supporting Intercultural Collaboration with Multiagent Systems
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17H00759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 亨 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20252489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 繁夫 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (80396118)
林 冬惠 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (90534131)
村上 陽平 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00435786)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 異文化コラボレーション / マルチエージェントシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
基盤研究において、まず最適均衡機械翻訳がより有効に機能するように,ユーザ辞書によるニューラル翻訳のカスタマイゼーションの研究を発展させた。本研究では、従来ニューラル翻訳が困難としていたコミュニティ固有の用語を既存の用語(サブワード)に分割し、その用語のベクトルを合成することで、既知の類似する用語を発見し、その用語を翻訳時に用いることで適切な翻訳結果を生成している。次に、協働参加者の異文化理解の支援において、文化依存の対話(Culturally Situated Dialogue)を適切に行うため、参加者の文化的背景を効率よく聞き出す戦略を学習する手法を提案した。また、提案した戦略を言語学習者支援の応用分野においても適用し、英文誌Research and Practice in Technology Enhanced Learningにおいて成果発表した。 実証研究において、まず協働支援環境における利用者に対する分析を行った。協働作業の円滑化には利用者同士の信頼が必要である。そこで、自己情報開示の程度と被信頼の関係を調べるため、Q&Aコミュニティのデータをもとにグラウンデッド・セオリーを用いて分析した。一般利用者に対しては開示の程度と被信頼が相関するが、熟練利用者に対しては相関がないことを発見した。この成果を国際論文誌Behaviour & Information Technologyで発表した。次に、マルチエージェントシステムを用いて、Internet of Services(IoS)とInternet of Things(IoT)による統合環境を初期的に構築した。統合環境では、IoT基盤上のセンサやアクチュエータとIoS基盤上のWebサービスをエージェントとして実現し、エージェント間の情報共有に関する仕組みを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基盤研究では、「非母語話者の困難の分析」と「非母語話者の発言の支援」を発展させると共に、「協働参加者の異文化理解の支援」の研究を中心に実施し、おおむね順調に進展している。これまでに、母語/非母語話者の言語運用能力を考慮し、発言機会が均等になるよう各参加者の機械翻訳の使用言語を決定する最適均衡機械翻訳を提案してきたが、コミュニティを支援する際の翻訳精度が課題であった。そこで、ユーザ辞書によるニューラル翻訳のカスタマイゼーションが必要となる。コミュニティ固有の用語の類義語をユーザのコーパスを用いずに獲得するために、サブワードに基づいて類義語を獲得する手法を開発した。この手法で獲得された類義語を用いて翻訳することで、従来手法よりも翻訳精度を5段階評価で0.46(3.31から3.77)向上させている。構築したカスタマイゼーション機能を言語グリッド上の複合サービスとして登録し、実用に供している。また、協働参加者の異文化理解を支援するために、強化学習を用いて文化依存の対話に関する戦略の効率化を実現し、言語学習の応用分野においても検証し有効性を確認している。 実証研究では、まず協働支援環境において、利用者の発話機会の均等化のための最適均衡機械翻訳の実現が重要である。これは話者の言語能力と機械翻訳精度にもとづくものである。実証の現場では、話者の言語能力の情報開示について、利用者に対する分析が必要である。自己情報開示の程度と被信頼に関する研究は、発話機会の均等化をさらに発展させるものであり、おおむね順調に進展していると言える。また、計画通りにマルチエージェントを用いた統合基盤を初期的に構築し、国際ワークショップ(2018 International Workshop on Massively Multi-Agent Systems)をオーガナイズし、研究成果の発信を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
基盤研究において、「協働参加者の異文化理解の支援」の研究を中心に進める。まず、協働活動を理解するために、コンテンツ作成の例を用いて、協働参加者の活動履歴に対する因子分析を実行し、協働のパターンの抽出・分析を行う。次に、最適均衡機械翻訳を考慮した異文化協働環境を実際に設計する。その際、参加者の言語能力の情報を保護するよう、秘匿計算を用いたシステム設計を行う。さらに、異文化協働環境を実現するための文化差理解の支援方法を考案する。具体的には、言語や文化を異にする参加者が提案する概念を理解するために、概念辞書と画像の類似度計算を用いて、文化差のある概念を自動的に検出・提示し、支援方法を実現する。 実証研究において、協働支援環境における分析を発展させると共に、マルチエージェントを用いた統合基盤の拡張に取り組む。自己情報開示の程度と被信頼の関係分析に関しては、データ入手容易性の観点から非対面であるQ&Aコミュニティのデータを利用した。一方、協働作業環境では対面でのコミュニケーションが主となる。開発した自己情報開示の程度の分類法をもとに、対面環境での分析を進める。また、機械翻訳や辞書などの言語サービスや、IoT関連サービスを、マルチエージェントを用いた統合基盤に追加していくことで、協働支援環境を強化する。さらに、基盤研究の成果を順次多言語現場に反映していく。提案したユーザ辞書によるニューラル翻訳のカスタマイゼーション手法では、事前にユーザによるコーパスの作成や再学習を必要としないため、ユーザ辞書への用語の登録に伴うコストが生じず実用が可能になった。今後は、子供たちの国際交流活動(KISSY)の支援に適用することで、大人よりも言語障壁が大きく、特徴的な造語を用いる子ども達のコミュニケーションにおいて、提案手法の有用性を検証する予定である。
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Research Products
(14 results)