2018 Fiscal Year Annual Research Report
塩素循環システム創出に向けた塩ビ廃棄物からの塩素回収プロセスの開発
Project/Area Number |
17H00795
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉岡 敏明 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30241532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 康裕 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40345096)
熊谷 将吾 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40757598)
大野 肇 東北大学, 工学研究科, 助教 (20769749)
亀田 知人 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60333895)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 塩素循環 / 塩ビ廃棄物 / リサイクル / マテリアルフロー解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩素の利用(ソーダ工業)には莫大なエネルギーを要し、塩素の大口需要先である塩化ビニル(PVC)の廃棄には、塩素を原因とする環境リスクが常に付きまとう。そこで本研究では、PVC廃棄物から塩素を回収しソーダ工業原料とする「塩素循環」という新概念を打ち出す。塩素循環の実現により、PVC廃棄物の塩素問題解消および資源化、ソーダ工業への塩素供給を可能とし、環境インパクト低減および資源・エネルギーの高効率利用実現が期待される。本研究では、新規塩素回収プロセス(湿式脱塩素法+電気透析法)の開発に向け要素技術開発を行うとともに、マテリアルフロー解析(MFA)およびライフサイクルアセスメント(LCA)による環境影響評価を同時進行で行うことで環境負荷低減効果を考慮した塩素回収の最適条件を導出し、我が国における塩素循環ポテンシャルを明確にする。 平成29年度は、塩素のMFAによる国内塩素フローの解明を行った。塩素に関連する素材・製品の輸出入、生産、加工、使用、塩ビ廃棄物リサイクルの各段階における原単位データを種々統計から抽出し、統計データから得られない情報(例えば塩ビ廃棄物中の軟質製品と硬質製品の割合等)の推計も行った。これらの研究により、国内塩素フローを詳細に可視化することに成功した。 平成30年度は塩素回収に及ぼす塩ビ廃棄物性状の影響(添加剤溶出・分解挙動の解明等)に関する知見およびMFA、LCAに供する実測データを蓄積し、本プロセスのボトルネックとなるホットスポット導出のための解析に着手した。また、脱塩素の効率性向上について理論的考察を行うため、炉内に挿入したステンレスボールが塩ビ廃棄物に対してボールミル効果を発揮する際のインパクトエネルギーに関する理論モデル構築を行った。エネルギー消費量や温室効果ガス排出量の算出等も行い、ラボスケールから規模を拡大した場合のシミュレーションも開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画目標であった、塩素回収に及ぼす塩ビ廃棄物性状の影響(添加剤溶出・分解挙動の解明、混在する異樹脂や金属類の化学的相互作用等)に関する知見の蓄積、MFAおよびLCAによる環境影響の定量化、さらに評価結果をプロセス開発にフィードバックすることで、環境負荷低減を目指した最適条件の導出、塩素循環ポテンシャルの明確化に向けた研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、PVC廃棄物の湿式脱塩素処理試験を進めMFAやLCAに供する実測データの取得を継続していく。湿式脱塩素処理試験において取得した実測データを元にLCAを実施し、本プロセスのホットスポット(ボトルネック)を明らかにすることで、その後の湿式脱塩素処理条件を決定していく。 一方、PVC廃棄物の湿式脱塩素処理において発生する使用済みエチレングリコールには、PVC由来の塩化物イオンおよびNaOH由来のナトリウムイオンが含まれており、これらのイオンを電気透析により水に移行することで、塩(NaCl)として回収する。電気透析により再生されたエチレングリコールは、再び湿式脱塩素処理溶媒として循環利用することを想定している。しかし、本研究におけるこれまでの検討において、PVC廃棄物を湿式脱塩素処理に供したところ、PVC廃棄物に由来する添加剤等の不純物が使用済みエチレングリコールに溶出してくることが判明した。よって、電気透析における塩化物イオンおよびナトリウムイオンの回収効率およびエチレングリコールの再生効率等に及ぼす不純物の影響を確認する必要性が生じた。本年度は、実際にPVC廃棄物の脱塩素処理によって生じた使用済みEGから、電気透析による塩化物イオンおよびナトリウムイオン回収およびエチレングリコール再生試験を実施する。本検討により、廃棄物由来の不純物の影響を考慮した各イオンおよびエチレングリコール再生率を実験的に算出することができれば、今後、より現実に即したMFAやLCAの実施が可能になると考えている。
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