2017 Fiscal Year Annual Research Report
Governance of Renewable Energy Project
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17H00828
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20316334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西城戸 誠 法政大学, 人間環境学部, 教授 (00333584)
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
角 一典 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10312323)
本巣 芽美 名古屋大学, 環境学研究科, 寄附講座講師 (40714457)
宮内 泰介 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50222328)
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
山下 英俊 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50323449)
茅野 恒秀 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (70583540)
森岡 正博 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)
山本 信次 岩手大学, 農学部, 准教授 (80292176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エネルギー技術 / 科学技術社会論 / 再生可能エネルギー / 環境社会学 / ガバナンス / 環境正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー技術と社会の関係が多様な主体の福利に適う条件を明らかにするための調査研究を進め、論文ならびに研究報告合わせて30報以上の成果を発表した。実証研究班、社会理論班、社会実験班の研究グループを構成し、それぞれ以下のような実績があった。
(1)実証研究班:広義の利害関係など、波及的影響も含めた社会過程を調査し、技術導入に伴うアクターネットワークとして図式化した。国内外の地域密着型事業への聞き取り調査を行う。これらの個別事例の調査に基づいて、エネルギー事業が地域社会にもたらしうる正負のインパクトの総体を明らかにした。またエネルギー小売の自由化の取り組みに注目し、生活クラブエナジーなどを対象とする調査を実施した。 (2)社会理論班:エネルギー技術と環境倫理についての既存研究をまとめながら、実証研究班の研究成果をマッピングするための理論的枠組みを構築した。具体的には、ガバナンス上配慮すべき課題として配分的正義、手続き的正義に加え、問題が不可視化されること自体を問う認識的正義(Recognition Justice)などについて議論した。また、技術導入に伴うリスクが選好される要因についての分析も進め、地域社会の自律と自立共生Conviviality)や潜在能力(capability)との関連にも注目し、適切なガバナンスを実現させるための「翻訳」や「相乗効果」(Co-benefit)の可能性を考察した。 (3)社会実験班:風力発電の適地をあらかじめ地域で選定するゾーニングについてのアクションリサーチを実施し、多様な主体の利益に適う社会的制御の方法を試行した。ゾーニングにおける条件設定と、個々の条件の中でのローカルナレッジの反映という課題について具体的方法を検討した。こうしたガバナンスの手法が事業者にとっても合理的であることも明らかになり、汎用的な手法となりうる可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証研究、社会理論、社会実験という分担で研究を進めてきたが、いずれも一定の成果をあげた。事例研究では国内外におけるエネルギー事業の取り組みについて網羅的に把握し、その理論的示唆についての考察も進展した。電力自由化後の変化についても着実に知見を蓄積しつつある。また、研究の成果と並行して既存の成果を踏まえたアクションリサーチも具体的に進行しつつある。 各研究グループの知見は適宜共有されており、総合的な知識生産が実現している。 具体的な研究成果は雑誌論文15本、共編著や単著を含む図書が2本、学会などでの報告14報を発表した。国内学会では企画セッションを企画し、現実の問題解決と研究活動の相乗効果をもたらす条件について報告し、大きな反響を得ている。また国際会議においても積極的に成果を報告している。 内容面でも一定の進捗があった。原子力と再生可能エネルギーの対立といった論点先取な扱いではなく、原子力反対と再エネ推進の相関が弱いことや、再エネの支持理由は推進主体への信頼や情報公開など別の要因によって説明されることについて実データに基づいた論証を蓄積しつつある。いずれも先行研究では明らかにされていなかった知見であり、学会報告などでも一定の反響が得られている。 また研究としての成果だけではなく、社会へのアウトリーチも実現している。再生可能エネルギーへの関心が高まっているなか、本研究グループやエネルギー技術のガバナンスという研究領域の存在は国内外で認知されており、一般向けの講演依頼もある。特に地方再生などエネルギー転換とは異なる文脈で再生可能エネルギーをとらえようとしている地域からは、強い関心をもって注目されている。またガバナンスの具体的手法の実現についての相談など、社会実装についても相談を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き三つのグループの連携を図りながら研究を進める。研究会を複数会実施しながらそれぞれのエネルギー技術についての社会的課題について網羅的に把握する。国内外での事例調査や研究交流にも積極的に取り組み、研究テーマに関する知見とアクションリサーチの方法論の一般化に努める。 今年度は事例の調査に重点を置き、ドイツにおける仮想発電所や都市公社など、固定価格買い取り制度後のコミュニティパワーついての調査をすすめる。また脱原発後の原発立地地域における社会経済状況についての調査などもすすめる。国内調査では自治体新電力やグリーン新電力の事例を収集すると同時に、これらがもたらす地域間連携などの副次的効果について明らかにする。 理論研究では、再生可能エネルギーの大量導入に伴う技術的課題やリスクトレードオフの課題を踏まえ、そこで発生する問題についての環境正義など理論的な研究についての検討を進める。 社会実験についても計画を進め、ジョイントファクトファインディング(共同事実確認)などの手法を具体化するための設計を進める。また過去に実施した社会実験については実証データの取得とガバナンスのための理論の精緻化に注力する。ビジネスモデルの構築や環境影響のガバナンスについては具体的な動きも発生しているため、他の主体との連携に十分注意しながら研究を進める。 研究内容や成果についてのフィードバックを得るために引き続き国内外での研究報告を積極的に行っていく。
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Research Products
(30 results)