2020 Fiscal Year Annual Research Report
保存処理材料が共存する有機文化財の後世調査に対する微量分析システムの構築
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17H00833
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
神谷 嘉美 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90445841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化財分析 / 複層構造 / 断面切削 / 微量採取 / 保存処置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、漆文化財のような多種類の有機材料が混在しながら「複層構造」となっている有機文化財を主な対象としつつ、ひとつの剥落片から複数の分析アプローチを行って、相互チェック可能な材質調査のシステム構築を目指している。 2019年末に発生したCOVID-19の世界的な流行拡大が2020年度以降も予想以上に続き、繰越を余儀なくされた結果として、国内外の美術館博物館や個人コレクションの現地調査を実施しながら、分析研究に向けた基礎的な情報を整理する当初の計画などに大きな支障が出てしまった。さらにモデルサンプル作製のため、有機文化財に対して有機材料を用いた保存処置法に関する現場での聞き取り調査も予定していたが、ほぼ実施できなかった。ただし、いくつかの手法については文献調査を通して情報収集を行い、基礎的な情報を整理して動向の把握に努めた。2021年度は画像処理用の備品を整備して、これまで作製した複層構造のクロスセクションのSEM画像データを収集し、画像解析のソフトウェアによって顔料粒子等の情報を簡便に取り出す方法を試みた。2022年後半には国内移動がしやすくなり、資料調査を行うことで有機文化財の保存に関する基礎的な情報を収集した。 分担者はCOVID-19だけでなく、ウクライナ情勢の影響によって入手しにくくなっていたHeガス不足により熱分析の実験に不具合が出ていたものの、国内の漆文化財の分析結果を整理して報告したり、これまでの研究成果をまとめたりして、情報を一般に向けて公表する作業に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で取り組んでいる「クロスセクションを利用したシステム構築」に必要な機器類を整備しつつあることから、具体的な剥落片などでの分析を遂行するため、国内外での美術館博物館等での現地調査を計画していた。特にヨーロッパには数多くの輸出漆器等の文化財に対して、漆以外の高分子材料による保存処置が施されていることが少なくないことから、現地の研究者らとの情報交換が重要であった。しかし、世界的なCOVID-19の流行拡大によって、国内外での調査は滞ってしまった。結果として、基礎的な情報収集や分析研究に向けたサンプルの入手などの実現は困難な状況が続き、進捗の遅れを取り戻すことができなかったことから「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の流行はようやく沈静化しつつあり、国外研究者との交流もできるようになってきた。現在、本研究課題の内容についてスウェーデンでのセミナー開催を目指し、スウェーデンの有機文化財を対象とした実験を試みていく予定である。またウクライナ情勢の影響によって熱分析に必須となるHeガスの入手に支障が出たこともあって、実験が滞っていた微量粉末試料の回収方法の検討等についても、測定を実施できる状況になりつつある。今後は実験回数が少なかった項目について測定数を増やしながら、学会発表や論文化に向けてデータを整理していきたい。
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Research Products
(12 results)