2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H00853
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 拓司 東北大学, 工学研究科, 教授 (20313728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 謙次 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00553801)
大森 俊宏 東北大学, 工学研究科, 助教 (10633456)
今井 陽介 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (60431524)
鹿毛 あずさ 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (10748809)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 微生物 / バイオメカニクス / 計算生体工学 / 実験生体工学 / 理論生体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に分子スケールと細胞スケール、メゾスケールの研究課題を推進した。主要な研究実績は以下のとおりである。 1. ダイニン分子モーターによって駆動される繊毛軸支の計算力学モデルを構築した。軸支が安定な回転運動を行うためには、ダイニン活性の特性時間が重要であることを示した。(Omori, et al., J. Biomech., 2017) 2. アクティブ粒子が固液混相流体中でどのように振舞うかを、理論と数値シミュレーションで解析した。その結果、細胞の遊泳モードによって捕捉・拡散・直進の3つの運動モードが現れることを明らかにした。この成果は、腸内細菌の運動を理解する上で重要である。(Chamolly, et al., New J. Phys., 2018) 3. 地中や体内などの入り組んだ環境においても、微生物はデッドエンドで行き詰まることなく、泳ぎで巧みに回避していることを発見した。この成果は、将来的に感染症が広がっていくメカニズムの解明などに役立つと期待される。(Ishikawa & Kikuchi, Proc. Roy. Soc. B, 2018) 4. 心臓血管系中の赤血球の分布を理解する上で、血球の分散・拡散現象を理解することは重要である。この研究では、実験から数理モデルを構築し、実験で観察される赤血球の挙動をランダムウォーク理論で説明することに成功した。(Chuang, et al., J. Biomech., 2018) 5. モデル生物のゼブラフィッシュを対象とし、消化管内の輸送現象を解析した。前腸部に現れる逆行性蠕動運動は、食べ物を攪拌して消化を促進することを定量的に示した。一方、後腸部の順行性蠕動運動はポンプの役割を果たしていることを明らかにした。(Yang, et al., J. Theor. Biol., 2018)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度にもかかわらず、8編の査読付き雑誌論文が出版されており、この分野で世界最高峰の研究成果が短期間に上がっている。特筆すべきは、デッドエンドを回避する微生物の仕組みを発見した研究成果(Ishikawa & Kikuchi, Proc. Roy. Soc. B, 2018)である。微生物が地中や体内などの入り組んだ環境でどのように生き延びているのかは不明であったが、実験と理論、数値シミュレーションを融合した研究を行うことで、微生物がデッドエンドで行き詰まることなく、泳ぎで巧みに回避して活路を見出していることを発見した。この成果は、微生物が入り組んだ環境で生き延びる仕組みを明らかにし、将来的には、感染症が広がっていくメカニズムの解明などに役立つと期待される。この成果は東北大学からプレスリリースされ、日経新聞や財経新聞などの多くのメディアで取り上げられ、大きな反響を呼んだ。 また、国際会議論文も12編発表しており、極めて活発な成果を上げている。国際会議における招待講演も多く、研究成果が世界的に注目されていることがわかる。以上から、当初の計画以上に成果が上がっていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、微生物の力学環境に着目し、ナノスケールから細胞スケールに駆動力などの物性値を渡し、細胞スケールからメゾスケールに走性などの細胞応答を、メゾスケールからマクロスケールに応力や拡散などのテンソル量を渡すことで、ナノスケールからマクロスケールに至るまでの微生物懸濁液の振る舞いを記述する革新的な解析プラットフォームを構築する。 平成30年度は、主に分子スケールと細胞スケール、メゾスケール、マクロスケールの研究課題に取り組む。具体的には、以下の課題に取り組む。 1.力学環境下における細胞膜たんぱく質の拡散現象の解明(分子スケール)。 2.繊毛打の同期現象が繊毛虫の遊泳挙動に及ぼす影響の解明(分子スケール,細胞スケール)。 3.アメーバ運動で移動するマイクロロボットの開発(細胞スケール) 4.流体力学的干渉による繊毛打波形の変化と、精子の集団遊泳挙動の解明(細胞スケール,メゾスケール)。 5.ゼブラフィッシュの腸蠕動が腸内細菌に及ぼす影響の解明(細胞スケール,メゾスケール,マクロスケール)。 6.バクテリアの壁面接着現象と、バイオフィルム形成過程の解明(細胞スケール,メゾスケール,マクロスケール)。
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Research Products
(38 results)