2018 Fiscal Year Annual Research Report
高体温誘発性換気亢進反応のメカニズム解明と熱中症予防への応用
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17H00876
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西保 岳 筑波大学, 体育系, 教授 (90237751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 直人 筑波大学, 体育系, 助教 (00796451)
本田 靖 筑波大学, 体育系, 教授 (20165616)
林 恵嗣 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (00431677)
小川 剛司 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70451698)
辻 文 県立広島大学, 公私立大学の部局等(広島キャンパス), 講師 (40707212)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 体温上昇 / 換気反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1: 運動前安静時において、カフェイン摂取によって換気量はControl条件よりも高くなり、呼気終末二酸化炭素分圧と中大脳動脈平均血流速度は低くなった。運動時の換気量は、両条件ともに食道温の上昇とともに増加し、高体温誘発性の換気亢進が観察された。この換気亢進反応の感受性 (食道温と換気量の回帰直線の傾き)は、カフェイン摂取条件でControl条件よりも大きくなり、呼吸回数がより大きく増加したことによるものであった。また、高体温誘発性の換気亢進に伴い、運動時の呼気終末二酸化炭素分圧と中大脳動脈平均血流速度も食道温上昇とともに低下し、これらの低下は、カフェイン摂取条件でより大きくなった。皮膚血流量と心拍数は、食道温上昇に伴い両条件ともに上昇した。安静時及び運動時の皮膚血流量は、カフェイン摂取の影響を受けなかった。心拍数は、安静時ではカフェイン摂取の影響を受けなかったが、深部体温が1.5 °C以上上昇する運動後半において、カフェイン摂取により高くなった。また、主観的運動強度は、運動前半ではカフェイン摂取により低値を示したが、この効果は運動後半では見られなくなった。安静時及び運動時の酸素摂取量、二酸化炭素排出量及び呼吸交換比は、カフェイン摂取の影響を受けなかった。 研究2: 暑熱下高強度運動時の暑熱対策として、運動前や運動間における冷気吸入が効果的である可能性が我々の実験室的研究で示された。すなわち、35℃の環境下で25℃程度の冷気の連続吸気によって冷却効果が得られた。冷却効果を高めるために、より低い温度の冷気作成、さらに、現場で応用可能な携帯型の冷気吸入装置の開発が必要である。そこで、冷気の温度調節、送風量、可搬性、の条件の装置を検討し、プロトタイプであるが、外気温30℃の環境下において、10℃以下の吸気呼吸が可能なシステムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた2つの研究が遂行でき、結果も興味深く、次年度(30年度)につながるものであったため。
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Strategy for Future Research Activity |
メントールは皮膚に存在する冷刺激受容器(TRPM8) を活性させ、皮膚温の変化なしに冷感をもたらす。先行研究では、メントールを全身または上半身の皮膚に塗布することで、運動に伴う体温上昇時の温度感覚や熱的快適性が改善されるが、その一方で、皮膚血流量や発汗量の増加といった体温上昇時の熱放散反応が抑制され、深部体温が上昇しやすくなると報告されている。皮膚へのメントール塗布による強力な皮膚における冷刺激 (<28°C)は、深部体温上昇時の換気亢進反応に影響を及ぼすかもしれない。もしそうであるならば、皮膚からの冷刺激受容器から中枢への感覚神経入力が換気亢進反応へ影響を及ぼすことになり、このような皮膚刺激を応用することによって、新たな熱中症対策方法開発へとつながると考えられる。そこで本年度は、上半身の皮膚へのメントール塗布が安静加温時の体温調節および呼吸循環応答に及ぼす影響を明らかにする。
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