2019 Fiscal Year Annual Research Report
「超越性」と「生」との接続:近現代ロシア思想史の批判的再構築に向けて
Project/Area Number |
17H00907
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00298118)
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
杉浦 秀一 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 名誉教授 (50196713)
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 准教授 (50271672)
下里 俊行 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (80262393)
坂庭 淳史 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80329044)
望月 哲男 中央学院大学, 現代教養学部, 教授 (90166330)
金山 浩司 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (90713181)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ロシア思想 / 宗教思想 / 科学思想 / 人文科学 / 超越性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、夏と春に2回の全体会合をおこなった。第1回会合(9月16-17日、北海道大学)では、若手研究者高橋健一郎氏を協力者として招き、「ロシア・アヴァンギャルドの宇宙論的音楽論」について研究発表していただき、討議するとともに、、本グループのロシアにおける協力者であるエヴラムピーエフ氏にもスカイプで参加していただき、その著書『ロシア哲学史』の内容について、また、研究分担者金山浩司氏の新著『神なき国の科学思想』について、合評と討議を行った。第2回会合(3月5-6日、九州大学)では、「ソロヴィヨフの論文「チュッチェフの詩」をめぐって」、「ロシアの三つの特殊性(自然、国家、社会)」、「19世紀後半ロシアにおける身体観の変容─「科学」的言説の動向を中心に」、「人文科学方法論の基礎と現代的課題:G. シペート、M. バフチンの理論的探究より」の4つの報告がなされ、ロシアの宗教哲学と19世紀ロシア文学とのかかわり、ロシアの法思想とその社会・政治的コンテクストの独自性、20世紀初期のロシアにおける人文科学理論の独自性などについて活発な議論がなされた。 代表者・分担者による関連研究業績としては、共編著書1、欧文論文2本(18世紀啓蒙主義、文学の国民化に関するもの)、日本語論文4本(ベルジャーエフ論、人文科学方法論に関するものなど)、国際学会等発表2本、国内学会等発表2本を数え、また『ロシア文化事典』の編集や項目執筆などにも多くのメンバーがかかわった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年同様、研究代表者および各分担者が、「超越性」と「生」の接続というテーマをそれぞれ多角的に追究し、2回の全体会合で共有するとともに、国内外の学会等での個別の研究発表、論文集や学術雑誌への投稿、さらに商業雑誌やネット配信などを通して、数多くの成果を世に出し、広く社会に還元してきた。 具体的には、代表者、分担者による関連論文が6本、内外の学会発表、講演、インターネットでの配信などによる関連テーマの成果発信が5回ほどあった。また2回の全体会合での報告と長時間にわたる討議によって、メンバーのあいだでの問題意識の共有もより緊密となった。 さらに全体会合では、博士学位取得直後の若手研究者や周辺領域の専門家にも積極的に参加してもらうように心がけ、次年度以降の研究の層をより厚くし、ロシアの思想史を他分野横断的な見地から再考するための努力もおこなってきた。こうした努力の結果、本研 究会は、国内のロシア思想史関係の研究会のなかでも、最も多彩で幅広く有能な人材が集まるものとなっている。 ただし、2019年度末に世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症により、毎年2-3月に予定していた国内研究会への一部のメンバー参加、および、海外における資料調査や学会参加が困難となり、予算の一部を繰越せざるを得なくなった。これにより、予定していた研究計画の一部で進捗に遅れが発生している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでの方針を継続し、参加メンバーによる基礎資料収集、資料読解をもとにした個別的研究をさらに推し進めるとともに、各種学会、学術誌、著書、講演、配信等による成果の公開を心がけ、また年2回の全体会合をつうじて、個別的研究の成果を本研究の大きなパースペクティヴのなかに位置づけて共有し、ロシア思想史の批判的再構築に向けた議論を活性化して、ロシア思想研究の新たな視点や枠組みの獲得を目指したい。 また、引き続き研究協力者として有能な若手研究者を発掘し、カバーする分野を広げるとともに、新たな方法論や隣接領域との協力をさらに推し進めていく。 資料調査では、新型コロナ感染症の今後の影響が予測不可能ではあるが、可能であれば海外(主にロシア、フィンランド等)における一次資料収集を中心とし、また、ロシア、ポーランド等で定期的に開催される思想史系の国際学会への参加も継続したい。こうした海外における活動のなかで知遇を得た海外の専門家にも情報提供者やアドバイザーとして参加していただき、可能なら日本への招聘や、講演、国際シンポジウム、ワークショップなどの開催、論文の寄稿などを今後企画・検討する。 さらに、本研究で得られたロシア思想史の再構築の大きな成果を広く社会や学界に還元するために、論集の刊行企画を継続する。本研究の研究代表者、研究分担者はすでに、本研究のテーマにかかわる多くの優れた業績を蓄積しており、これらを従来の思想史研究の批判的再構築というまとまったコンセプトのもとにまとめて刊行すれば、我が国におけるロシア思想史研究の水準や風景は、多くの点で刷新されるのではないかと考えられる。この企画によって、ロシア思想史研究再構築の新たな流れを作り出していきたい。
|
Research Products
(11 results)
-
-
[Journal Article] ‘The Period of Stagnation’ Fostered by Publishing: The Popularization, Nationalization and Internationalization of Russian Literature in the 1880s2020
Author(s)
Kaizawa, Hajime
-
Journal Title
Yukiko Tatsumi, Taro Tsurumi, eds, Publishing in Tsarist Russia: A History of Print Media from Enlightenment to Revolution, London, New York, Oxford, New Delhi, Sydney: Bloomsbury Academic, 2020
Volume: なし
Pages: 69-94
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-