2017 Fiscal Year Annual Research Report
世界史的視点からの国民国家における戦争記憶の記録化と戦後社会の構築に関する研究
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17H00929
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
檜山 幸夫 中京大学, 法学部, 教授 (40148242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 戦争記念碑 / 戦歿者慰霊 / 戦後の和解論 / 戦争の記憶 / 戦争の記録 / 戦後論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家や国民が戦後に戦争処理として構築する戦争記念碑や戦歿者墓碑石の形状と碑文等の分析を通じて、戦争の記憶がどのように記録され後世に伝えられようとしているのかを、一国主義的な個別性を踏まえつつ世界史的視点からそこで主張されている普遍的な考え方を明らかにすることによって、戦後の和解への方法論を探し出すことを目的としている。このため、現地における調査として、国内では明治維新から現代まで、海外では主に第一次大戦から現代までの記念碑と戦歿者墓碑を中心に行った。まず、国内の調査において、香川県で戦後の戦死者の慰霊を中心に、兵庫県では空襲と動員学徒の犠牲者慰霊について、徳島県では地域共同体が建立した記念碑・慰霊碑と軍人墓を、内戦犠牲者慰霊として京都府で戊辰戦争での薩摩藩士の墓碑を、函館市では政府軍と反政府軍の墓碑と慰霊碑を、沖縄県では沖縄戦での犠牲者慰霊について、慰霊碑と墓碑の悉皆調査を行い詳細な情報を収集した。海外での調査では、戦後の戦争として、ベトナムにおいてベトナム戦争における米軍と韓国軍が行った住民虐殺に対して謝罪と和解がどのように行われてきているのかを記念碑と住民への聞き取りを中心に調査し、イタリアではナチドイツとファシストによる住民虐殺についてその記憶をどのように記録し犠牲者慰霊を行ってきたのかと、パルチザンとファシストの犠牲者慰霊について、ギリシャではナチドイツによる住民虐殺について墓碑と慰霊碑・記念碑の調査を行うと共に、関係者や関係機関での聞き取りを行い現在的問題について情報を収集した。これらの調査研究によって、記念碑や墓碑に刻まれている文字情報が極めて大きな意味を持っていることがより明確になり、従来の表面的な研究ではなく、さらに深く踏み込んだ資料分析とより多くの事例を調査していく必要性があることが判り、仮説の正しさと、さらに踏み込んだ研究の必要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始時は、今までの研究を踏襲しそれを発展させたものであったが、研究を推し進めていく段階で、さらに新しい課題や今まで知られていなかった事例や資料が出てきたことから、それらを積極的に取り入れたことにより研究の幅を大きく拡げるとともに深化させることができた。とりわけ、現地において市町村役場や遺族等の関係者への聞き取りなどを行ったこと、現地調査で紹介された研究者と知りあい交流を深めることができたことにより、研究のさらなる発展に繋がっていったことは大きな成果であった。これにより、本年度はそれをより発展させ大きく展開させていくことが可能となったことが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、予想以上に大きな成果を上げることが出来たが、それは一般的に知られていない事例が現地調査において発見されたことと、現地における調査でさまざまな関係者と知り合うことができたことなどが上げられる。これは、基本的には本研究の方向性や方法論、調査対象者や地域の選択などが正しかったことを意味している。このため、今後もこれまでの方法で研究を推進していくべきであると思われることから、研究対象者や対象地域などを積極的に広げるとともにより深化させていくべきであると思われる。
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