2018 Fiscal Year Annual Research Report
Historical studies on the identity of people crossing seas and the Region States
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17H00931
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
上田 信 立教大学, 文学部, 教授 (90151802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 伸司 追手門学院大学, 国際教養学部, 名誉教授 (20109242)
中里 成章 東京大学, 東洋文化研究所, 名誉教授 (30114581)
弘末 雅士 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (40208872)
渡辺 佳成 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80210962)
疇谷 憲洋 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (80310944)
鈴木 英明 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 助教 (80626317)
赤嶺 淳 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90336701)
山口 元樹 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (60732922)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 渡海者 / アイデンティティ / 16-17世紀 / オランダ東インド会社 / ポルトガル / スペイン / マラッカ海峡 / 英国人私人 |
Outline of Annual Research Achievements |
全体: オランダ植民地各種図面集の整理を継続して進めるとともに、関連資料の収集を行った。7月に大分市で研究会を開催し、九州大学の中島楽章氏を招き、16世紀の日欧間渡海者について検討、さらに大友宗麟関連史跡を調査した。2月には国際「アジアの海を渡る人々―16-17世紀の渡海者」を、中島氏代表の科研との共同開催を行い、これまでの成果を公開した。このシンポジウムの成果は、2019年度に一般書として刊行することを目指す。8月にオランダを中心とした調査、2月にポルトガルにおいて合同調査を実施し、渡海者の出身地の政治・社会的背景について調査を進めた。合同調査のあと上田は単独でスペインで領域国家と渡海者との関連について調査を進めた。研究成果を国際的に発信するために、研究論文の英訳を進め、次年度刊行を目指す。 研究分担者:弘末はオランダで出版された東インド(インドネシア)をテーマとした小説を調査した。重松はベンガル湾―マラッカ海峡―南シナ海にまたがる海域を舞台としたインド海商と彼らの多民族間交易関係について調査に基づき分析した。中里は19世紀半ばのカルカッタの有力英字紙に基づき、英国人私人に関する記事を分析、また大英図書館などでインドに渡った英国人私人、インドから英国に渡った船員・知識人・労働者などについて文献調査を行った。渡邊は台湾の故宮博物院所蔵のビルマ関係アーカイブの収集と整理を進めた。疇谷はリスボン国立図書館などで資料取集を行い、新キリスト教徒の海外展開に関する研究を進めた。鈴木はペルシア湾の拘束労働者関係に関する資料収集を進めた。モーリシャス島とバンコクにおける契約労働移民にも注目し研究文献の収集を進めている。赤嶺は青森県八戸市を訪問し、南氷洋に出漁していた人びとの個人史を採集した。山口はインドネシアのアラブ人コミュニティについて、イスラームと社会統合という観点から考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表・分担者ともに、予定していた研究課題をほぼ達成した。史料収集・整理の面では、研究代表のもとで進めているオランダ植民地各種図面集の整理が順調に進んでおり、来年度には内容を網羅するカタログを公表できる予定。研究分担者はポルトガル・イギリス・オランダなどの図書館・資料館などで、史料収集を進めることができた。これらの史料に基づいて、次年度以降に整理・分析を行い、研究成果を公表する予定となっている。 現地調査においては、従来の一般的な認識を越える新しい知見をえることができた。上田は夏に17世紀に多くの渡海者を送り出したオランダで資料収集と史跡調査を進めた。そのなかで、渡海者を輩出する背景にバルト海におけるニシン交易があることを確認できた。2-3月のポルトガル・スペイン調査では、渡海者を送り出した国家の形成プロセスが、海外展開の方向性を大きく規定することが明らかとなった。マラッカ海峡における海商については、重松の精力的な調査に基づき、新しい事実の発掘がなされ、その成果は単著の出版に結びついた。現地調査は通説を越えることを可能とする。 7月に行った大分での研究集会に、九州大学の中島氏を招いたことが契機となり、2月に中島氏が研究代表を務める科研(基盤研究B)「16-17世紀、東アジア海域の紛争と外交―日本・漢籍・イベリア史料による研究―」との共催でシンポジウムを開催することができた。共通のテーマを異なる視点から検討する研究成果が報告され、双方の研究の視座を拡げることが可能となった。 研究論考を英訳するプロジェクトを進め、成果を海外に向けて発信する準備を進めた。この報告書を契機として、今後は国際的な研究者のネットワークの構築を目指す。 研究課題の1つとしていた多言語で執筆された研究文献の翻訳については、本年度には十分に進めることができなかった。次年度以降の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は主に16-17世紀の渡海者を中心に研究を進めた。その成果のうえに立って、2019年度は主に18-19世紀の渡海者を取り上げて、検討を行う。 ①スコットランド出身渡海者の研究:上記の時期に活躍したスコットランド出身の渡海者に焦点をあて、6-8月にかけて、上田を中心にロンドン(大英博物館・SOASなど)での資料調査、スコットランド(エディンバラ・グラスゴーなど)での資料収集を行う。9月には中里・重松を中心に東インド会社の最大の拠点で会ったコルカタ(カルカッタ)において、図書館・博物館などでの資料調査、ならびに史跡の視察を行う。②ポルトガル・スペイン関連の渡海者の研究:昨年度の研究成果を補充・発展させるために、バチカンでの宣教師文書、メキシコでの壁画の再調査、フィリピン(主にマニラ)での資料調査を行う。③2020年2月に公開シンポジウム「アジアの海を渡る人々:18-19世紀」(仮)を開催し、研究成果を広く公開する。④年度内に前年度に開催した公開シンポジウム「アジアの海を渡る人々:16-17世紀」の登壇者を軸に、一般書を刊行する(印税なし)。⑤日本の海域史の到達点をひろく世界に発信するために、昨年度に英訳した日本語文献を立教大学アジア地域研究所の冊子、ならびに立教大学学術リポジトリにて公開する。さらに2018年度の研究成果にもとづき、公開シンポジウムの成果の公表を積極的に進める。 2019年度は主に18-19世紀の渡海者について研究を進める。最終年度には、20世紀の渡海者に焦点をあてる。研究代表・各分担者のあいだの連携を緊密に保ち、本科研のテーマである渡海者のアイデンティティの多様性と共通性、渡海者を送り出し、受け入れた領域国家の変容について、全体的な見通しを立てることを目指す。また、研究成果を国内外に積極的に発信する準備を進めている。
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Research Products
(24 results)