2019 Fiscal Year Annual Research Report
Global Production Network and Industrial Agglomeration
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17H00986
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古澤 泰治 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80272095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 洋一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (20743719)
冨浦 英一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40273065)
村田 安寧 日本大学, 経済学部, 教授 (40336508)
石川 城太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80240761)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グローバル・バリュー・チェーン / GVC / ネットワーク / サプライ・チェーン / 中間材貿易 / 産業集積 / グラビティー・モデル / マッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
地政学的緊張が高まる今日、グローバル生産ネットワークの再構築と重要産業の地域的集積は非常に重要な問題である。本研究では、いくつかの関連テーマについて重要な研究成果を上げてきた。
まずは、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の諸問題を研究する定量分析ツールを確立したことである。その分析ツールは既存の定量分析を応用したものではあるが、中間財貿易と最終財貿易とで貿易コストが異なることを許したり、財の生産技術向上にその生産性の向上だけでなく、クオリティーの向上も組み込むことができるようにしたりと、GVC分析により適したものとなっている。その分析ツールを使用し、新興国の経済成長が世界各国に与えた影響を解明したり、AIやロボットの労働市場への影響を検証したりした。AIやロボットの国際的影響を定量的に扱った研究はまだ緒についたばかりだが、貿易コスト減少の影響と比較し、現状ではその影響は微々たるものであることを明らかにするなど、この分野の進展に大きな貢献をした。
次に、GVC理論の基礎となる理論の開発や定量分析が挙げられる。その一つが国際寡占モデルへの輸送セクターの明示的導入であり、この分析により、産業保護的貿易政策の意図せざる影響が明らかになり、GVCへの政策効果の分析手法確立に貢献した。また、投入・産出関係を考慮した独占的競争の一般均衡モデルにより、市場の歪みによる厚生損失を計測した研究も進んだ。この定量分析により、生産ネットワークの存在が、市場の歪みによる厚生損失を5%から9%程度増幅させることがわかった。そしてその研究成果は、トップ5と呼ばれる国際専門誌の一つに掲載され、国際的に高く評価された。さらに、日本の産業クラスター政策の効果を検証した研究により、実際に行われた個別政策の評価も行われ、GVCの再構築に対する最適政策の研究に役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要テーマであるGVC研究のための分析ツールの開発は、成功裡に終了した。その分析ツールを使用し、論文を3本執筆し、一つは専門誌に掲載され、2本目の論文は国際的共同執筆となったRobots and AI: a New Economic Eraに掲載されることとなった。残る一つは、国際的専門誌投稿に向け改訂中である。また、中心となるGVC研究を補完するいくつかの研究も、順調に成果を上げた。それらの研究成果は、Quarterly Journal of Economicsを始めとするトップクラスの国際的専門誌へ掲載された。科学研究費補助事業としては、繰越事業費を使用し終了していくことになるが、本来の目的を達成するとともに、今後につながる研究成果を得たと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発したGVC研究のための分析ツールは、GVCによって繋がれた世界経済で発生するさまざまな事象の分析や、政策効果の分析、需要・供給ショックの国際波及など、多様な分析に使用できる。今後は、特に地政学的変化による中間材供給網の世界的再構築の影響など、各種リスクが経済に与える影響を定量的に分析し、ショックの影響を和らげる政策について論じていきたい。まずはその前に、本研究で得られた成果を国際コンファレンスで広く公表し、未公刊の論文を国際誌に掲載していく。こうした活動から、研究チームも国際的に拡大していきたいと考える。
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Research Products
(47 results)